紫紙金字華厳経巻第六十三 ししきんじけごんきょうまきだいろくじゅうさん

歴史資料/書跡・典籍/古文書 その他 / 奈良

  • 千葉県
  • 奈良
  • 1巻
  • 国立歴史民俗博物館 千葉県佐倉市城内町117
  • 重文指定年月日:19860606
    国宝指定年月日:
    登録年月日:
  • 大学共同利用機関法人人間文化研究機構
  • 国宝・重要文化財(美術品)

 厚手の紫紙に銀で界線を施し(界高一九・五センチ、界幅一・八~一・九センチ)、本文は一紙二六行、一行一七字に金泥にて謹直な筆致で書写している。首題「大方廣佛花嚴經入法界品第卅九之四巻六十三新譯」、尾題「大方廣佛華嚴經巻第六十三」とあり、全一九紙で華厳経巻第六十三を完存している。表紙も紫紙の原表紙で、「大方廣佛華嚴経巻第□□」と金泥で外題があり、外題下および表紙と本紙の継目裏に「東大寺印」の朱方印が各一顆捺されている(ただし印文は現在ほとんど判読できない)。軸は紫檀撥型で巻首、巻尾にやや損傷を認めるが、全体として美麗に保存良好である。
 華厳経は大乗仏教の主要経典の一つで、その漢訳本としては六十巻本(仏駄跋陀羅訳)と八十巻本(実叉難陀訳)と四十巻本(貞元経、般若訳)の三種があるが、本巻は実叉難陀訳になる新訳本である。本巻はもと東大寺に伝来したものであるが、現在その僚巻は東大寺になく、巷間に出た巻第六十一(大東急記念文庫所蔵)、巻第六十二(藤田美術館所蔵)、巻第六十四(五島美術館蔵)、巻第六十五(岡村隆三氏所蔵)、巻第七十(国有、奈良国立博物館保管)の五巻が知られ、いずれも重要文化財に指定されている。これらはいずれも、もとは巻第六十一から第七十に至る一帙十巻のものであったと考えられる。
 この紫紙金字華厳経は、聖武天皇の勅旨国分寺経である紫紙金字金光明最勝王経とともに天平装飾経の代表的遺品であり、本巻は表紙以下の原姿を伝え、一巻を完存するものとして重要である。

紫紙金字華厳経巻第六十三

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