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夕張岳の高山植物群落および蛇紋岩メランジュ帯

ゆうばりだけのこうざんしょくぶつぐんらくおよびじゃもんがんめらんじゅたい

概要

夕張岳の高山植物群落および蛇紋岩メランジュ帯

ゆうばりだけのこうざんしょくぶつぐんらくおよびじゃもんがんめらんじゅたい

天然記念物 / 北海道 / 北海道

北海道

夕張市空知郡南富良野町

指定年月日:19960619
管理団体名:

史跡名勝天然記念物

 現在の北海道の形の基本は、中生代白亜紀から新生代第三紀(約一億年前から約一千万年前)にかけてプレートの沈み込みにより東西北海道が接近し、ついには衝突することにより形成されたものである。夕張岳は、この衝突により生じた北海道中央部を南北に走る脊梁山脈のうち夕張山系の南端近くに位置する。
 夕張岳の高山植物群落は、蛇紋岩の成分である超塩基性の成分と結びついたきわめて希少な蛇紋岩変形植物、氷河期の遺存種など夕張岳固有あるいは特異的な分布を示す高山植物で特徴づけられる。夕張岳固有種としては、ユウバリコザクラ、エゾノクモマグサ、シソバキスミレなど、また特異な分布を示す植物としては、カトウハコベ、ナンブイヌナズナ、ミヤマハンモドキ、シロウマチドリ等があげられる。
 夕張岳の高山植物の組成はわずかな距離で変化し、北海道の山岳でみられる高山植物のほぼ全てがみられる。さらに夕張岳固有の植物が加わることで、他ではみられないほどの豊富で多様な様相を呈している。
 接近し、ついには衝突した東西北海道の境界地帯である夕張岳を含む一帯は、この過程で地下数十キロメートルの深さにあったカンラン岩に水が付け加わり上昇して形成された蛇紋岩のわが国最大の分布地域となっている。さらに、プレートの沈み込みを示す特徴的岩石として注目され、世界的にも稀な蛇紋岩メランジュが広く分布している。そのなかでも夕張岳周辺は、その中核をなすものであり、地球科学的研究が進展している高緯度地域に存在する蛇紋岩メランジュとしては、世界でも有数のものである。
 蛇紋岩は上昇のの途中で、様々な時代の変成岩や堆積岩を礫として取り込んでいき、やがて蛇紋岩メランジュとして地表に到達する。夕張岳周辺は、硬質の火成岩や堆積岩に周辺を取り囲まれており、これらが浸食に対する抵抗力の弱い蛇紋岩メランンジュが高度の高い山岳地域に露出することを可能にした。また、夕張岳周辺では、蛇紋岩メランジュに取り込まれた礫が地表に突出した典型的なノッカー地形が発達する。夕張岳やガマ岩などは、取り込まれた礫自体であり、ノッカーの典型である。
 このように、植物、植生のみならず地形や地質構造においても非常に貴重で学術上卓越した価値を有するものである。よってこれらを天然記念物に指定し、保護を図ろうとするものである。

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