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北条氏常盤亭跡

ほうじょうしときわていあと

概要

北条氏常盤亭跡

ほうじょうしときわていあと

史跡 / 関東 / 神奈川県

神奈川県

鎌倉市常盤

指定年月日:19781219
管理団体名:

史跡名勝天然記念物

 鎌倉の七切通りの一つである大仏切通(史跡)の北方台地を西北方に廻り切った一帯は「常盤」とよばれ、現在もなお大部分が水田及び畑地である奥深い谷戸がいくつも南に向かって開いている。この「常盤」の地が、鎌倉時代に北条氏一族中の有力者が所領とし、その邸宅を構えていた『吾妻鏡』『建治三年記』『新後撰和歌集』に見える「常葉」「常磐」「常盤」の地であることは疑いない。そして、この地の東半分の谷奥には、現に小字「御所の内」の地名が残り、『新編相模国風土記稿』をはじめ近世の地誌類はいずれも北条義時の子で執権・連署をつとめた北条政村の常盤の邸宅が営まれたと詳説し、また西半分には小字「殿入」という地名が残り、同『風土記稿』は政村の甥で連署をつとめた北条義政の邸宅があったという伝えを掲げている。勿論、政村邸ににせよ、義政邸にせよ、現在の特定場所を明示することは文献的に不可能であるが、他の切通にも北条氏の有力な一族の邸宅を配した事実とも考えあわせると、この鎌倉防衛上の要地である常盤の地に政村、時村や時茂、時範、範貞等のいわゆる常盤一族の邸宅が営まれたことは確実なのである。
 現在の常盤の地は、谷戸の多くが幾つかの段差に人工的に造成されたと思われる平坦地に区切られており、「タチンダイ(館の台)」とよばれる谷戸の奥地には表面観察だけでも2、3の保存度のよい「やぐら」が見られ、その西隣の「法華堂」とよばれる谷土の奥には明らかに方形に岩盤を切り開いた空間と門扉の痕跡があり、更にこれらの谷戸の裏山には堅堀や腰曲輪など城塞的造成の跡も見受けられる。また昭和52年、「御所の内」谷戸で行なわれた宅地造成の事前発掘調査の結果、5間×3間の礎石を有する東西棟建物跡やその他の柱穴・溝・井戸等を検出するとともに、鎌倉時代のものと推定される上質の石製硯・金銅製水滴・滑石製印判・骨製骰子・青(白)磁片等の注目すべき遺物が出土したが、このような発掘調査の所見によっても、今後この常盤の地一帯の発掘調査に寄せる期待は大きい。
 北条氏常盤亭跡は、もとより解明すべき課題は山積するが、従来一例も明らかにされていない北条氏邸宅の実態を知るために貴重な遺跡であるばかりでなく、ひいては鎌倉時代中期の政治史や文化史を考える上で欠くことのできない重要な遺跡である。

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キーワード

北条 / / / 鎌倉

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