文化遺産オンライン

新倉の糸魚川―静岡構造線

あらくらのいといがわしずおかこうぞうせん

概要

新倉の糸魚川―静岡構造線

あらくらのいといがわしずおかこうぞうせん

天然記念物 / 中部 / 山梨県

山梨県

南巨摩郡早川町

指定年月日:20010813
管理団体名:

史跡名勝天然記念物

 糸魚川―静岡構造線は,ほぼ南北の延びを示し,新潟県糸魚川市から長野県大町市,松本市,諏訪市,富士見町,山梨県白州町,早川町を経て静岡市に達する。日本列島中央部を横断し,東北日本と西南日本を分ける延長250kmにも及ぶ大断層である。近年では,北アメリカプレートとユーラシアプレートを画するプレート境界であるとする学説もあり,極めて重要な断層である。糸魚川―静岡構造線の西側が比較的古い時代の地質を主体とするのに比べ東側の地域は,新第三紀(2,400万年前以降)や第四紀(200万年前以降)の若い時代の地質を主体とする。この東側の地域が,ナウマン(H.E.Naumann:1854-1927)によりフォッサマグナ(FossaMagna=大きな溝)と呼ばれた地域である。フォッサマグナは,およそ1,500万年前日本海の拡大に伴って形成された凹地で,フォッサマグナの西側の境界が糸魚川―静岡構造線である。
 糸魚川―静岡構造線は,全ての区間で活断層というわけではない。活断層の部分は,北は長野県白馬村から南は山梨県櫛形町の間である。糸魚川―白馬村間と山梨県櫛形町―静岡市の間は,活断層の痕跡を示す地形が認められていない。糸魚川―静岡構造線の活断層の部分を,特に「糸魚川―静岡構造線活断層系」と呼ぶことがある。活動度は,主に長野県内の部分で高く,松本市付近で1,000年あたり8.6mという高い活動度を示している。糸魚川―静岡構造線活断層系は,「北部」,「中部」,「南部」と大きく3つの部分から成り立っている。北部の活断層は,東側の地盤が西へつきあげる逆断層,中部は,左横ずれ断層,南部は,西側の地盤が東へつきあげる逆断層,となっている。特に,中部の横ずれ断層の部分は,諏訪湖付近で中央構造線を12kmほど左にずらせている。
 山梨県早川町新倉の内河内川左岸には,糸魚川―静岡構造線の逆断層が見事に露出している。断層の西側は,先新第三系瀬戸川層群の黒色粘板岩,東側は,新第三系中新統の凝灰岩類からなる。断層面の走向は北25°西,傾斜は45°西で,西側の古い地層が東側の新しい地層の上にのし上がっているのがわかる。
 「新倉の糸魚川―静岡構造線」は,活断層ではないものの,断層の形態が明瞭にわかる。東日本と西日本を画する,わが国でも第一級の断層である糸魚川―静岡構造線が典型的に見られる場所として貴重である。よって天然記念物に指定し,保護を図ろうとするものである。

関連作品

チェックした関連作品の検索