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八幡浜市大島のシュードタキライト及び変成岩類

やわたはましおおしまのしゅーどたきいとおよびへんせいがんるい

概要

八幡浜市大島のシュードタキライト及び変成岩類

やわたはましおおしまのしゅーどたきいとおよびへんせいがんるい

天然記念物 / 中国・四国 / 愛媛県

愛媛県

八幡浜市大島

指定年月日:20040930
管理団体名:

史跡名勝天然記念物

大島は、宇和海に浮かぶ5つの島からなる。北から粟の小島、大島、三王島、地大島、貝付小島と連なり、面積は併せて1.82平方km。四国本土とは最短1.5kmの距離にあり、八幡浜港からは、渡船で25分の位置にある。
大島の北側の大部分には、三波川結晶片岩が露出し、大島の南部ではこの上に片麻岩を主体とする大島変成岩類が断層でのし上げている。大島変成岩類の最下部には、シュードタキライトという断層岩の一種を伴った断層帯が集中する。この断層帯は、今から5〜6千万年前の当時の中央構造線の活動に伴って形成されたと考えられる。三王島から、地大島の北の端にかけては再び三波川結晶片岩類が分布し、断層関係で白亜紀(1億4300万年前〜6500万年前)の真穴層と接する。
三波川結晶片岩は、高い圧力を受けてもとの岩石の組織が変化した変成岩である。変成する前の岩石の種類により緑色片岩、黒色片岩、石英片岩などの種類が観察できる。このうち特に緑色片岩は庭石の三波石として有名である。
大島変成岩は、ハンレイ岩やカコウ岩や堆積岩などが高い温度でその組織を変えた片麻岩と呼ばれる変成岩からなり、三波川結晶片岩に低角の逆断層でのし上げている。
大島変成岩の中には、断層が高速で動いた時に両側の岩石が溶けて固まったシュードタキライト(PseudoTachylyte)が発達している。シュードタキライトは火山から噴出した玄武岩に似ているが、断層岩の一種である。シュードタキライトは、地震を起こした震源断層そのものであり、地震の化石とも呼ばれており、地震発生のメカニズム解明のために重要である。大島変成岩中のシュードタキライトは、我が国で知られる最大規模のものであり、その点からも貴重である。
三波川結晶片岩は、日本列島を地質の上で大区分した時には三波川帯という区分に属し、大島変成岩はその北側に分布する領家帯という区分の最下部に属している岩石である。もともと領家帯の岩石は三波川帯の岩石の上に低角の逆断層の関係でのっていたものであるが、日本列島の隆起による侵食により失われてしまった。八幡浜地域は隆起量が小さいため、領家帯の最下部の変成岩が残ったほとんど唯一の場所である。シュードタキライトが両者の接触部の衝上断層に近いところに形成されているのは、領家帯と三波川帯との間で、地震を伴う激しい運動があったことを示す証拠であり、白亜紀にさかのぼるとされる中央構造線の初期の活動を示唆している。
また、真穴層は地大島に分布する比較的浅い海で堆積した砂岩と泥岩からなる。真穴層は、三波川結晶片岩や大島変成岩とともに激しい地殻変動を被っており、一部では地層の逆転現象も見られるなど、三波川結晶片岩と大島変成岩の位置付けを考える上で重要な地層である。
このように八幡浜市大島には、単に多様な岩石が露出するだけでなく、日本列島の骨格になる地質構造が残されており、さらに地震発生のメカニズム解明に重要なシュードタキライトが発達しており貴重である。よって、天然記念物に指定し保存を図ろうとするものである。

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