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谷家能楽資料

たにけのうがくしりょう

概要

谷家能楽資料

たにけのうがくしりょう

その他の美術 / 室町 / 安土・桃山 / 江戸 / 明治 / 大正 / 昭和以降 / 九州 / 福岡県

福岡県

室町時代~昭和時代/15世紀~20世紀前半

101点

福岡県太宰府市石坂4-7-2

重文指定年月日:
国宝指定年月日:
登録年月日:20141217

登録美術品

 「谷家能楽資料」は江戸時代末期に日向国(ひゅうがのくに)延岡藩の豪商となり,近代には宮崎県下屈指の大地主となった谷家(屋号「藤屋」)に伝来した資料で,能面19面,能装束80点,楽器2点からなる。
 同家は幕末以降,山海産物を中心に廻船によって上方との交易を積極的に行い,財政基盤を築いた。また,関西の能の名家とも親交があり,谷家の分家筋には能楽師も輩出している。能の名家との親交が本資料の伝来の背景である。
 能面は,中世まで遡る1面と,江戸時代の15面,近代の3面からなる。
 本資料中最も古い「山姥(やまんば)」は,室町時代まで遡る可能性のある優品として注目される。角を植えていた痕跡があり,もとは鬼面であった可能性のある能面である。
 江戸時代の作品は,一定の水準を示す作品で構成される。「小面(こおもて)」・「喝食(かっしき)」・「平太(へいた)」の裏面には作者を示す焼き印があり,いずれも印どおりの作者による佳作である。「六十三(ろくじゅうさん)(熊坂(くまさか))」も優れた作品である。
 近代の作品は,近代能面作家として著名な中村直彦や,幕末・明治期の彫刻家で宝生(ほうしょう)流の能面作家 矢野啓通(たかみち)の作品からなる。
 また,附属する箱や面袋等には作者や伝来を示す墨書等があり,資料的価値が認められる。
 能装束は,江戸時代後期から昭和初期にかけて制作されたもので,唐織(からおり)・縫箔(ぬいはく)・摺箔(すりはく)・厚板(あついた)・熨斗目(のしめ)・着付けの小袖もの・狩衣(かりぎぬ)・法被(はっぴ)・側次(そばつぎ)・長絹(ちょうけん)の広袖もの・大口(おおぐち)・半切(はんぎり)の袴類と主立った能装束をそろえる。ほかに,腰帯・鬘(かずら)帯の帯類,かぶり物の角帽子(すみぼうし),数珠を含む。全体に偏りなく様々な役柄に対応できるように整えられている。
 能装束の一括資料は,大名家や能楽宗家,寺社に伝来しているが,町方に伝来するものについては江戸時代のものは希少性が高く,近代のものに限られることが多い。江戸時代の作品だけでなく,近代の作品についても実態を把握することは既に難しくなりつつあり,このように体系的かつ保存状態も良好な資料は貴重である。
 楽器は,小鼓胴(こつづみどう)と能管(のうかん)の2点からなる。龍虎梅竹蒔絵小鼓胴(りゅうこうめたけまきえこつづみどう)は,金銀高蒔絵(たかまきえ)に切金(きりかね)で龍・虎・笹・梅樹等を表した江戸時代の佳作で,皮や蒔絵箱を備える。また,能管は20世紀の作ではあるが,瀟洒な蒔絵を施した笛筒も具備し,能の道具立てとして貴重である。
 以上の谷家能楽資料は,主に江戸時代から昭和初期にかけてのまとまった能楽資料として貴重であるだけでなく,地方の商家における近代以降の能楽の受容を知る資料として重要な資料群である。

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キーワード

/ 装束 / 能楽 / 伝来

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