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絹本著色両界曼荼羅

けんぽんちゃくしょくりょうがいまんだら

概要

絹本著色両界曼荼羅

けんぽんちゃくしょくりょうがいまんだら

日本画 / 鎌倉 / 南北朝 / 近畿

鎌倉時代後期~南北朝時代(14世紀)/14世紀

懸幅装・絹本著色

各 縦149.0cm×横136.0cm

2幅

神戸市指定
指定年月日:20130319

有形文化財(美術工芸品)

 真言宗において曼荼羅は、密教の根本・宇宙の真理を眼に見える形で表現したものとして尊重され、その教えを授け、後世に伝えてくうえで必要不可欠なものである。 
 本曼荼羅は中台八葉院を中心に十三院をめぐらす胎蔵界と、成身会をはじめとする方形の九会からなる金剛界の一対で構成される。
 彩色は東寺所蔵の西院曼荼羅(9世紀後半)を彷彿とさせるが、図像は弘法大師空海が中国・唐で恵果から授かった現図曼荼羅の系統をひく真言正系のものである。胎蔵界(図1)、金剛界(図2)ともに一部に補筆および補彩が見られるが、それぞれの仏は極めて丁寧に描かれている。また画面の保存状態は概ね良好である。曼荼羅の制作は通常、数人の絵師が分担するため部分によって出来・不出来の差が生じるが、本図においても各部にそのような差が感じられる。特に優れているのは、金剛界の大日如来(図3)の表現である。真言正系の図像を謹直な線で忠実に描き、鎌倉時代に流行する寒色系の彩色を上質な岩絵具を用いて施すなど、密教における最高尊格に位置する大日如来を崇高に美しく表現している。
 胎蔵界に関しても、最外縁に位置する仏にいたるまで、実に丁寧に描いている。また、この時代の曼荼羅では省略されることもある胎蔵五仏の頭光の意匠の違いを、本図では空海がもたらした現図曼荼羅に忠実に、そして的確に描き分けている(図4)。制作にあたった絵師たちは、真言正系の曼荼羅を忠実に伝えようとする真摯な信仰心のもと、自らの技量を最大限に発揮したのであろう。この点が、本図最大の特徴である。         
 神戸市内には、西区の天台宗の古刹・太山寺に、国の重要文化財に指定されている真言正系の両界曼荼羅2幅が伝来しているが、本図は太山寺本と比較しても全く遜色ない出来栄えを示す。平安時代以来、真言の法灯を伝える妙法寺に、このような素晴らしい曼荼羅が伝来したことは、美術史的にも歴史学的にも貴重である。

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キーワード

曼荼羅 / / 胎蔵 / 金剛

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