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武雄鍋島家洋学関係資料

たけおなべしまけようがくかんけいしりょう

概要

武雄鍋島家洋学関係資料

たけおなべしまけようがくかんけいしりょう

歴史資料/書跡・典籍/古文書 / 江戸 / 明治 / 九州 / 佐賀県

佐賀県

江戸~明治

2224点

武雄市武雄町大字武雄5304-1

重文指定年月日:20140821
国宝指定年月日:
登録年月日:

武雄市

国宝・重要文化財(美術品)

 佐賀藩の武雄領(邑)鍋島家伝来に伝来した、江戸時代後期の西洋文物導入期から、戊辰戦争に至る期間の洋学関係の一括資料群である。 
 文書・記録類は、鍋島茂義(1800~62)・茂昌(1832~1910)期の武雄鍋島家が収受、作成した文書・記録と、戊辰戦争期を中心とした書状群に大別される。文書は武雄領での洋学摂取や、西洋砲術を核とした近代軍制の整備、火器・銃砲そのほかの輸入機械の注文・購入の覚書類、奥羽出兵時の新政府からの布達・沙汰書、戦線にて往復された、銃砲・弾薬・軍事物資の消費、運搬、補給に関係する覚書や士卒の軍中での通行手形等が含まれる。記録は、武雄領士卒の名簿類、長崎貿易での西洋文物や火器・銃砲の注文・購入記録、茂義の手になる舶来植物を模写した図譜類等で、特に天保9年(1838)から文久2年(1862)の長崎貿易の注文書控「長崎方控」4冊には、多数注文品・到来品が記載され、蘭書をはじめ同家が入手した品目が通覧される貴重な資料である。
 標本類は、茂義手製の「腊葉」が残される。中国、琉球、ヨーロッパ産の舶来植物を押し花にし、オランダ名を注記する。「ダーデルボーム(ナツメヤシ)」の標本には「嘉永七庚寅」の貼紙があり、茂義の御手元本と推測される。
 和書・訳書類は、茂義・茂昌収集の典籍類で、西洋砲術・軍制を中心とした軍事、化学、技術、西洋医学の本が集中する。
 洋書類は、蘭書と一部の英書で、百科事典、化学、語学、軍事、医学、物理学、植物学、航海術、機械工学、幾何学、天文学、測量術、理科学機器カタログ等多岐の分野にわたる。
 絵図・地図類は、長崎伊王島台場図や戊辰戦争期の戦略地図等、砲術との関連性が強い。
 また図面類は、大砲およびその製造にかかるもので、外国製原図、同印刷図面、同図面写およびわが国で作図された原図またはその写の4つに大別される。このなかにはモルチール砲等各種砲の切形類も含まれる。
 写真には上野彦馬の写場での撮影と推測される台紙貼写真も含まれる。
 最後に本件を特徴づける器物類は、軍事、天文・測量、科学、その他に大別される。軍事関係の器物では、モルチール砲、試薬モルチール砲、ボンベン野戦砲(施条カノン砲)、ナポレオン式四斤野砲の4門が遺存する。アムステルダムのファルク工房による地球儀・天球儀1対や、5種の望遠鏡、セキスタントなどの天文測量器具のほか、エレキテルも現存する。またランビキや乳鉢・乳棒、ガラス製漏斗、三口ガラス器、白磁製乾溜器等のガラス器や磁器、オランダのフォッケ・メルツァー社製のホクトメートルや、顕微鏡等の実験器具も多数確認されるほか、絵具(ウルトラマリンブルーなど)も残されており武雄鍋島家の西洋学術への広範な関心を示す。
 以上のように本件は、情報源である洋書・輸入図面、入手あるいは受容にかかる記録、実物という3種の異なる資料を含んでおり、わが国における幕末期の西洋学術・科学技術の受容史において、また軍事技術・兵学の発達史において貴重なまとまった資料群と位置づけられるものである。

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