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グラスのある静物

概要

グラスのある静物

絵画 / 油彩画 / ヨーロッパ

エルンスト・ルートヴィヒ キルヒナー  (1880-1938年)

きるひなーえるんすとるーとびひ

1912年

画布,油彩

100.0 x 74.0cm,122.4 x 96.8cm

  ドイツ、フランクフルト近郊のアッシャフェンブルクに生まれる。ドレスデンの工科大学で、ブライルやヘッケルと知り合って一緒に絵を描き始める。1905年にシュミット=ロットルフが彼らに加わって「ブリュッケ」が結成され、その指導的存在となる。仲間との共同制作を通じ、強い輪郭線と荒々しい筆触を特徴とする作品が描かれた。1911年のベルリン転居を境に、独自の筆触がいっそう明瞭になり、形態も鋭角的になって独自の様式の完成をみた。第一次世界大戦の戦争体験により神経に障害をきたし、1917年にスイスのダヴォースに隠棲してからは、雄大な山岳風景を描いた。1937年のナチスによる頽廃芸術一掃運動に続く健康状態の悪化や強い孤独感からダヴォース近郊のフラウエンキルヒェで自害。  ベルリンのアトリエで描かれた作品である。画面は円と直線が基本的な構成要素となっており、とくに円がこの絵の中では支配的である。キルヒナーは1910年秋頃から約半年、非ヨーロッパ的なものからインスピレーションを得ようと図書館に通い、ジョン・グリフィスの本を通じてアジャンタの壁画を知るが、円を基本とするその造形方法が、この静物画にも応用されている。意味論的な解釈をすれば、この静物画にはプリミティヴや自然に対するモダンや人工という対立関係が見てとれる。背景の壁掛けにはアフリカやオセアニアの美術からとった裸の男女が戯れる図が表わされており、それがアダムとエヴァの話を連想させるリンゴの背後に見えている。キルヒナー自身が彫った果物皿はプリミティヴな彫刻を模したものである。一方グラスやランプは近代的で人工的なものである。1937年の頽廃美術展に出品された歴史をもつ作品。(F.H.)

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