酒売場 さけうりば

絵画  油彩画 / 昭和以降 / 日本 

長谷川利行 (1891-1940年)
はせかわとしゆき
1927年
画布,油彩
53.3 x 65.5cm,79.8 x 91.8cm

 京都府に生まれる。彼の経歴には不明な点が多いが、中学時代は和歌山県湯浅町で過ごし、詩歌に興味をもち、また水彩画を描いていたようである。1921年頃に上京し、はじめは文学を志したが、1923年の関東大震災の後に本格的に油絵を描くようになった。この年、第1回新光洋画会展に入選。その後一時京都に戻り、1926年に再び上京して第7回帝展に《廃道》、第13回二科展には《田端変電所》を出品して初入選し、その自由で個性的な作風が注目されるようになった。彼の日常は、窮民街にある簡易宿泊所に寝泊まりし、酒場やカフェ、演芸場に立ち寄って描き、作品はすぐに換金して酒を飲むといった状態であった。そのような中で彼は下町の情景やそこで生活する人々の姿を、奔放ななかに詩情をたたえる作風で表現し続け、しだいに純化された世界をつくりあげていった。やがて健康を害し東京市養育院に収容された年の10月に亡くなった。 長谷川は、1926年の第13回二科展で初入選し、翌年の第14回展には、この《酒売場》をはじめ《麦酒室》《鉄管のある工場》を出品して、新人への奨励賞という意味をもっていた樗牛賞を受賞した。この作品には酒と下町を好んだ彼がよく出入りしていた浅草の神谷バー内の情景が描かれている。黒や赤の奔放な線を用いながらも建物の構造体である柱や梁を堅固にとらえ、灰白色の壁とそこに置かれた緑との対比のなかに、この建物内部の大きな空間が表現されている。そこに酒を楽しむ人々の姿がシルエットとして重なり合って、融け込んでいくかのように描かれている。そこには一見雑然としたなかに、見事な画面構成と色彩の調和があり、哀歓をたたえた詩的な世界がつくりあげられている。それは浅草などの下町を愛し、自身もそこに暮らし、酒を飲み、絵を描き続けたこの画家にしか表現できなかったものということができる。(M.M.)

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