ヘルプ

世界遺産と無形文化遺産

世界遺産条約履行のための作業指針

Ⅱ 世界遺産条約一覧表

II.F 保護管理
96.
世界遺産資産の保護管理にあたっては、顕著な普遍的価値及び完全性及び/又は真正性の登録時の状態が、将来にわたって維持、強化されるように担保すること。

97.
世界遺産一覧表に登録されているすべての資産は、適切な長期的立法措置、規制措置、制度的措置、及び/又は伝統的手法により確実な保護管理が担保されていなければなからない。その際、適切な保護範囲(境界)の設定を行うべきである。締約国は、登録推薦資産についても、同様に、国、地域、市町村の各段階における適切な保護対策及び/又は伝統的手法による適切な保護対策を具体的に示すことが求められる。従って、締約国は、当該資産を保護するためにどのような措置が実施されているかについて分かりやすく解説した説明文を登録推薦書に添付すること。


立法措置、規制措置、契約による保護措置

98.
資産の存続を保証し、顕著な普遍的価値及び完全性及び/又は真正性に影響を及ぼす可能性のある開発等から資産を保護するための立法措置、規制措置を国及び地方レベルで整備することが求められる。また、締約国は、それらの施策を十分かつ効果的に実施する必要がある。


効果的な保護のための境界線の設定

99.
境界線を明確に設定することは、登録推薦資産を効果的に保護するための不可欠な要件である。境界線の設定は、資産の顕著な普遍的価値及び完全性及び/又は真正性が十分に表現されることを保証するように行われればならない。

100.
登録基準(i)から(vi) に基づいて登録推薦される資産の場合は、資産の顕著な普遍的価値を直接的かつ具体的に表現しているすべての領域、属性を包含するとともに、将来の調査次第でそれらの理解を深めることに寄与する潜在的可能性を有する地域もあわせて含むように境界を設定すること。 *

101.
登録基準(vii)から(x) に基づいて登録推薦される資産の場合は、世界遺産一覧表登録の根拠となる生息域、種、(生物学的、地質学的)過程又は現象を成立させる空間的要件を反映した境界を設定すること。推薦範囲外の浸食的人間活動や資源利用の直接的影響から資産の遺産価値を保護するために、顕著な普遍的価値を持つ範囲に直接的に隣接する地域について十分な範囲を含むようにすること。

102.
登録推薦資産の境界は、自然公園、自然保護区(リザーブ)、生物圏保護区(バイオスフィアリザーブ)、歴史的保護地区など、既存または計画中の保護区と重なる場合がある。これら既存の保護区内には管理水準の異なる複数のゾーンが設定されていることがあるが、必ずしも全てのゾーンが登録のための基準を満たすとは限らない。


緩衝地帯

103.
資産を適切に保全するために必要な場合は、適切に緩衝地帯(バッファゾーン)を設定すること。

104.
緩衝地帯は、推薦資産の効果的な保護を目的として、推薦資産を取り囲む地域に、法的又は慣習的手法により補完的な利用・開発規制を敷くことにより設けられるもうひとつの保護の網である。推薦資産の直接のセッティング、重要な景色やその他資産の保護を支える重要な機能をもつ地域又は特性が含まれるべきである。緩衝地帯を成す範囲は、個々に適切なメカニズムによって決定されるべきである。登録推薦の際には、緩衝地帯の大きさ、特性及び緩衝地帯で許可される用途についての詳細及び資産と緩衝地帯の正確な境界を示す地図を提出すること。.

105.
設定された緩衝地帯が、当該資産をどのように保護するのかについての分かりやすい説明もあわせて示すこと。

106.
緩衝地帯を設定しない場合は、緩衝地帯を必要としない理由を登録推薦書に明示すること。

107.
通常、緩衝地帯は登録推薦資産とは別であるが、資産が世界遺産一覧表へ登録された後に緩衝地帯を変更する場合は、世界遺産委員会の承認を得ること。


管理体制

108.
各登録推薦資産には、資産の顕著な普遍的価値をどのように保全すべきか(参加型手法を用いることが望ましい)について明示した適切な 管理計画の策定又は管理体制**の設置を行うこと。

109.
管理体制の目的は、登録推薦資産の現在及び将来に渡る効果的な保護を担保することである。

110.
どのような管理体制が効果的かは、登録推薦資産のタイプ、特性、ニーズや当該資産が置かれた文化、自然面での文脈によっても異なる。管理体制の形は、文化的視点、資源量その他の要因によって、様々な形をとり得る。伝統的手法、既存の都市計画・地域計画手法やその他の計画手法が使われることが考えられる。

111.
上記の多様性を認識したうえで、効果的な管理体制に共通する要素として、以下のものが挙げられる。
a) すべての関係者が資産についての理解を十二分に共有していること。
b) 計画、実行、モニタリング、評価、フィードバックのサイクル。
c) パートナーと関係者が参加していること。
d) 必要な(人的、財政的)資源が割り当てられていること。
e) キャパシティビルディング。
f) 管理体制の運営に関するアカウンタビリティと透明性。
以上について、完全性の宣言において説明を行うこと。

112.
効果的な管理には、登録推薦資産の保護、保全、及び公開に関して、長期的取組み/日常的活動のサイクルがある。

113.
さらに、条約の履行という観点から、世界遺産委員会はリアクティブモニタリング( 第IV章参照)及び定期的報告(第V章 参照)の手続きを設定している。

114.
「連続性のある資産」については、個々の構成要素の管理を連携して行うための管理体制・メカニズムが不可欠であり、登録推薦書に明記することが求められる( 第137-139段落参照)。

115.
世界遺産委員会に資産を登録推薦した時点では、管理計画又はその他の管理体制が整備されていない場合も考えられる。その場合、当該締約国は、いつ管理計画・体制が整備されるのか、どのようにして新しい管理計画・体制の整備及び実施に必要な(人的、財政的)資源を確保するのかについて示すことが求められれる。あわせて、管理計画が完成するまでの間についての管理方針を示す文書(作業計画等)を提出すること。

116.
登録推薦資産の本来の特質が、人為的行為に脅かされていながら、なお 登録基準及び第78段落から第95段落 に既定されている真正性または完全性の条件を満たしている場合は、必要な是正措置について示したアクションプランを登録推薦ファイルとともに提出することが求められる。締約国が提出した是正措置が、締約国により提示された期限内に実施されない場合は、委員会で採択される手順に基づき、委員会は資産をリストから削除することを検討する (第IV章C参照)。

117.
締結国には、世界遺産資産のための効果的な管理活動を効果的に実施する責任がある。締約国は、資産の管理者、管理権限を持つ機関その他のパートナー、及び資産管理関係者との緊密な連携を図ること。

118.
締約国が世界遺産管理計画及びトレーニングストラテジー中に リスク対策***の項目を含めることを、委員会は推奨する。
決議 28 COM 10B.4参照

持続可能な利用

119.
世界遺産資産は、生物学的、文化的に持続可能な様々な利用と両立し得る。締約国とパートナーは、そのような持続可能な利用が資産の顕著な普遍的価値や完全性/真正性を損なうことがないように努めなければならない。さらに、いかなる利用も生物学的、文化的に持続可能であることが求められる。但し、なかには人間による利用が適切ではない資産も存在する。

* 英語原文に不備が認められる。

**管理計画はないが管理体制は存在するという場合は、管理体制について文書で説明する必要がある。

***英語原文はrisk preparedness。直訳すれば「リスク(に対する)準備度」。
ページトップへ