古く肥後地方には盲僧が多く、かまど払いや新築祝いなどに琵琶を弾じながら仏教の経文を唱えた。その後、中央の文化の影響を受けて、これら盲僧が古浄瑠璃から転化した物語や九州地方に伝承される物語を語るようになった。時代の変遷とともにこの演奏者は減少し、大正の初めごろには熊本県下で二、三十人ぐらいになり、今日では数人を残すのみとなった。この肥後琵琶【ひごびわ】は、現在古浄瑠璃から転化した「百合若大臣」「小栗判官照手姫【おぐりはんがんてるてひめ】」「関東軍記上野合戦【かんとうぐんきうえののかつせん】」、九州地方に伝承される物語から転化した「菊地くずれ」「牡丹長者物語」などの曲目を継承しており、浄瑠璃の歴史を知る上に貴重である。
熊本県教育委員会内に置かれている肥後琵琶保存会の主な演奏者は西村定一(芸名教山)、山鹿良之(芸名玉川教演)、野添栄喜などであった。