木造阿弥陀如来立像(見返り阿弥陀)

彫刻 / 平安

  • 平安
  • 重文指定年月日:19990607
    国宝指定年月日:
    登録年月日:
  • 禅林寺
  • 国宝・重要文化財(美術品)

 見返り阿弥陀としてつとに有名な禅林寺の本尊で、頭部を左方に、躰部も左方に少し傾けて、左足膝を軽く曲げ、左足先をわずか前に出して立つ通形とは異なる阿弥陀像である。
 当寺は、仁寿三年(八五三)に真紹が藤原関雄の山荘を買い取り、五仏を本尊とする寺院として創建された。現在、永観堂と通称されるように、永観(一〇三三-一一一一年)がその後入寺し、続いて珍海、静遍などが入り、南都三論系の浄土教的性格が強まった。
 頭躰幹部は、頭部耳後、躰部正中の位置で縦に左右に矧ぎ(両手の主要部および左袖外側を含む)、さらに頸から胸にかけての衲衣襟際で矧ぐ。胸部はその右方で縦に別材を矧ぐ。頭躰像内に内刳りを施す。左手首先、左袖内側、右手前膊下半および手首先、右袖外側、同内側を各矧ぐ。裙と両足は正中で縦に矧いだものを衲衣の裾の内側に差し入れて矧ぐ。両足先、足〓(後補)を各矧ぐ。
 見返り阿弥陀の彫刻作例は、中国四川省の安岳円覚洞第十六号窟に遺例(北宋)が報告されている。わが国では、本像が最も古く、次いで鎌倉時代以降の作品が若干ある。
 本像は顔を小さく造り躰躯も全体に小振りで、繊細微妙な感情があり、また横向きの頭部に伴う躰のゆるやかな動きも自然である。平安時代末の風がよく出ており、大波・小波を繰り返す軟らかな衣文もこの期によくみられるもので、一二世紀後半の製作と推定される。
 木寄せ構造は、肉身部と著衣部を別材とするという原則によるもので、一二世紀にその古例がみられ、本像はその一例である。
 院政期後半の本格的な作風を示し、かつ、見返りという稀有の図像、肉身部・著衣部の分離というこの時期での特殊な技法のこともあり、美術史だけでなく文化史の研究上貴重な資料である。

木造阿弥陀如来立像(見返り阿弥陀)

ページトップへ