花
Flowers
1933年
北海道立三岸好太郎美術館蔵[O-58]
表面の黒色層を搔き削り、下地の白によって線を描いている。花を抽象化したものだが、刻まれた線はささくれだち、無機的で鋭利な印象を与える。1933年頃の三岸好太郎のこうした前衛的実験は、個性派そろいの独立会員に混じって自らの画風をうち立てるための苦心の取り組みでもあっただろう。しかし、その思い切った画風の転換は大方の理解を得られなかった。必然性を認めないという批判に対して三岸は、美術には元来、観念的なるものと唯物的なるものという相矛盾する要素が含まれているとし、「フォーヴ的な感覚に」陶酔して居た自分が、非人間的な理知的な冷徹な現代的な機械美に魅力を感じ様とした事は当然ではないか。」と反駁している