本海獅子舞番楽は、古くから信仰対象になっていた鳥海山山麓の13地区で、それぞれ伝承される。17世紀に、本海行人あるいは本海坊と呼ばれた宗教者によって伝授されたと伝え、本海獅子舞や本海番楽と呼ばれることもある。
特に獅子舞を重視し、地区ごとに毎年1月に幕開きを行って1年間の活動を始め、9月あるいは11月や12月の幕納めで活動を締めくくる。その間、各地区の神社祭礼、8月の盆、秋の豊作祭りに演じ、特別に7月の虫追いや新築の家の火災除けに演じることもある。
獅子舞は、獅子頭を持つ者と、獅子の幕を持つ者の2名で演じ、他の山岳信仰を背景にした獅子舞と比較し、舞の動作は激しく、また歯打ちを何度も繰り返す。獅子舞以外の演目は「鳥舞【とりまい】」「翁【おきな】」などの儀式的な舞や「山の神」「剣之舞」などの神の舞、「曽我【そが】」「八島【やしま】」などの武士舞、「鐘巻【かねまき】」「橋引【はしひき】」などの女舞などと多様である。
本件は、鳥海山に対する信仰を背景に、激しい動作で、繰り返し歯を打ち鳴らす獅子舞を中心に、儀式的な舞や武士舞など多様な演目を伝承し、神社祭礼や盆など地域の人々の生活に深く関わって演じられるところに特色がある。
(※解説は指定当時のものをもとにしています)