軸首は、軸先【じくさき】、軸端【じくばな】などとも呼ばれ、掛幅装【かけふくそう】や巻子装【かんすそう】など表具の一部材である。軸木の両端に装着され、装飾の一翼を担うとともに、巻き解きの手がかりとする。
軸首は、文化財の内容や表具の形式等により、金工品、木工品、漆工品、牙製品等のほか、水晶、陶磁器等の材質が用いられ、撥軸【ばちじく】、切軸【きりじく】(頭切【ずんぎり】)、印可軸【いんかじく】等の形状に加工される。
木工品では、主として黒檀【こくたん】、紫檀【したん】など唐木【からき】と呼ばれる材が多用される。黒檀は黒色、紫檀は赤褐色を基調とし、堅固、重厚、緻密な材質が珍重された。
軸首は、木取りののち、轆轤【ろくろ】を用い刃物により成形するが、寸分違わず繊細な形状に仕上げるためには、材質を見極めるとともに、繊細、正確な加工技術を必要とする。
軸首は、損傷、亡失が比較的多い部材で、修理の際に新調される例が多く、文化財修理に欠かすことができない。近年は需要の減少とともに製作者の数も減少し、同時に良質の材料の入手が困難になってきていることから、良質な表具用木製軸首製作技術に対し保存の措置を講ずる必要がある。