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東寺百合文書(二万四千六十七通)

とうじひゃくごうもんじょ

概要

東寺百合文書(二万四千六十七通)

とうじひゃくごうもんじょ

その他 / 安土・桃山 / 江戸 / 奈良 / 平安 / 室町 / 鎌倉 / 南北朝 / 近畿 / 京都府

京都府

奈良~江戸

3863巻、1172冊、6帖、67幅、13695通

京都府立京都学・歴彩館 京都府京都市左京区下鴨半木町1-29

重文指定年月日:
国宝指定年月日:19970630
登録年月日:

京都府

国宝・重要文化財(美術品)

 東寺百合文書は教王護国寺の宝蔵、御影堂に伝来した寺院文書で、奈良時代から江戸時代初期までの全二四、〇六七通に及ぶ膨大な史料群である。
 本文書は近世に入り幾度かの整理がなされるが、その最大のものが加賀藩主前田綱紀による整理調査であった。前田綱紀は後藤演乗等に命じて、調査、謄写を行い、その作業の終了した貞享二年(一六八五)に桐文書箱を寄進して、文書を収めさせた。このうち現存しているのは、片仮名四六箱、平仮名四八箱の計九四箱である。今回の国宝指定にあたり、保存修理によって開披可能となった伊勢国川合庄関係文書や宝荘厳院領重書案などの新出文書五三通を新たに追加している。
 東寺は平安時代に真言密教の根本道場として朝廷などの保護を受け、中世においても大師(御影堂)信仰によって公武をはじめとする信仰を集め、多くの庄園を領有した権門寺院である。こうした東寺の宗教活動や寺院経済に関する史料である本文書は函ごとにある程度のまとまりで収められている。本文書の特徴は、まず東寺学衆と供僧の寺家文書である仏事・法会・祈祷、評定引付などにかかわる文書が中心を占め、次に公武との交渉を伝える文書が多いことである。これらのなかには太政官牒、官宣旨などの平安時代の太政官文書がまとまっているほか、綸旨、院宣、摂関家御教書、東寺長者御教書や鎌倉・室町幕府関係の文書など、各時代の文書、各様式の文書が含まれている。
 寺院の中心的活動である仏事・法会・祈祷に関する文書には、修僧の請定・廻請・交名、着到・巻数返事等がみられる。うち後七日御修法修僧交名は平安時代後期から江戸時代前期まで連続してまとまっている点は注目される。供僧組織の評定記録である評定引付はその記録史料としての性格からひとつの事件に関連する記述が系統的で、かつその具体的記載から寺院活動を包括的に知りえる重要な史料である。鎌倉・室町幕府関係では、永仁の徳政令である永仁五年(一二九七)三月六日関東事書案などがあり、また足利将軍家の東寺鎮守八幡宮に対する信仰から山城国久世庄などの庄園寄進にともなう関連文書までが多数残されている。とくに東寺の領有した四一か国二百余庄にわたる庄園に関する多数の文書は、中世社会の実態を最もよく伝えた史料として、わが国庄園史研究上に重要視されている。これらのなかには、建武元年(一三三四)八月若狭国太良庄百姓等申状并連署起請文や寛正四年(一四六三)の備中国新見庄領家方代官祐清殺害事件の事後処理の過程で作成された女性たまがき書状のように歴史上に著名な文書が少なくない。また庄園村落の様子を伝える絵図類が多くあるのも特色である。なかでも桂川用水差図案は、明応四年(一四九五)の山城国西岡五ケ庄と、対岸に位置する西八条西庄との分水をめぐる相論の過程で証拠書類として作成された用水差図として、それに併せて相論文書も残されている点、中世農民の生活実態を伝えて注目される。
 このように百合文書は仏教史、寺院史、寺院制度史研究上に貴重であるのみならず、中世社会の全体構造を解明する基本史料として質量ともに最も優れたわが国最大の文書史料である。また本文書の大部分は作成当時の状態をよく残しており、古文書学上にもきわめて価値が高い。

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