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紙本著色遊行上人絵伝〈巻第三残巻、第七/〉

概要

紙本著色遊行上人絵伝〈巻第三残巻、第七/〉

絵画 / 鎌倉 / 関東 / 東京都

東京都

鎌倉

2巻

東京国立博物館 東京都台東区上野公園13-9

重文指定年月日:19980630
国宝指定年月日:
登録年月日:

独立行政法人国立文化財機構

国宝・重要文化財(美術品)

 時宗の開祖一遍智真の伝記四巻、第二祖の他阿真教の伝記六巻からなる遊行上人絵伝(一二巻本の一遍上人絵伝と区別するため宗俊本の名でも呼ばれる)の残巻本である。現在、甲、乙の二巻があり、現状は錯簡が多い。これを整理すれば、残っているのは詞、絵に部分的に欠失箇所があるものの、一遍上人の伝記を記す巻第三全四段のうち第一、二段と、他阿上人の伝記を記す巻第七全六段のうち第一段の言葉と第六段の絵を除いた部分である。
 遊行上人絵伝にはすでにいくつかの指定品があるが、本絵巻の絵は、これらのうち巻第三において京都・金光寺本(巻第三、五、六、九が残る)と、巻第七においては昨年指定された大分・永福寺本(巻第七のみ)と図様的に共通する部分がある。
 遊行上人絵伝自体は、巻第十、最終段詞書に嘉元元年(一三〇三)の記述があること、京都・金蓮寺本(これ自体は後代の写しと考えられている)に徳治二年(一三〇七)の奥書があることなどから、成立したのはこのあたり、すなわち一四世紀のごく初期であったと考えられるが、その後、絵においてはいくつかの変化に富んだ作品が生まれている。これに対して、本絵巻、金光寺本、永福寺本の上記三本は描写態度においていずれも几帳面に描かれており、しかも図様に共通性が強いことから、想定される原本の図様を比較的よく伝えているものであることが想像できる。ことに本絵巻は、巻第三は残るが第七の残らない金光寺本、第七は残るが第三の残らない永福寺本の間をつないでこれら三本の共通性を明らかにしてくれる点で貴重な遺品といえるであろう。
 絵の描写においても、暢達した筆線、形態把握の的確さ、衣服の文様の緻密な彩色など、鎌倉時代後期の主要なやまと絵の作品に通する優れたものがみられる。制作期は鎌倉時代を下らないと考えられ、遊行上人絵伝自体の成立からもさほど隔たらない時期の作品ということになる。現存するのが二巻に満たない部分であるのは惜しまれるが、遊行上人絵伝の諸本のなかでも貴重な佳品の一つといえよう。

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