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吉川元春館跡庭園

きっかわもとはるやかたあとていえん

概要

吉川元春館跡庭園

きっかわもとはるやかたあとていえん

名勝 / 中国・四国 / 広島県

広島県

山県郡北広島町

指定年月日:20020920
管理団体名:

史跡名勝天然記念物

毛利元就の次男吉川元春が隠居所として建てた館跡で,元春の居城である日山城の南西麓,志路原川に面した河岸段丘上に立地する。館は北側は切岸,南側は堀,東側は石垣で区画された間口110m,奥行き80mの規模を有する。庭園は館の北西部にあって,人工的な造形の池と築山を持つ小面積の庭園である。
 庭園は東西と南の一部が築地塀で囲まれた東西11mの小規模な庭園で,北は土塁で画されて築山を築く。築山は一辺6m,高さ1.2mが遺存し,頂部東寄りに1mの立石が,南寄りには滝石組と三尊石風立石群が並ぶ。滝石組両側には大石を立て,三段に落ちる力強い滝を造る。築山南には池を設け,東西6.7m,南北6m,深さは最大0.5mで,底には,0.3〜0.5m大の扁平な石を敷き詰め隙間には玉砂利を埋め,石の化粧や扱いはそのまま鑑賞に堪える見事さである。北東の滝から入った水は南西に設けられた石組溝の池尻から流れ出る。護岸は南と東が直線,北と西は曲線的に造られる石組護岸である。南直線護岸の一部は建物の礎石と併用されている。池の東護岸は当初曲線であったものが直線に改修されている。庭園は滝石組の正面で,築地塀が途切れた南側建物から鑑賞されていたと思われる。池底の状態などから,極めて人工的に造られた池ではあるが,水生植物を植えたと思われる部分が確認できるなど,鋭い空間を和らげる優れた空間造形がみられる。
 本庭園の東側にも,後に築山の一部を切って造られた,北側と西側を塀で囲まれる庭園があったが,庭園を含む部分が削平されていて遺構全体の残りは良くない。それでも,東西1.6m,南北7.5mの範囲が遺存し,1m大の景石を2個中央に立て,その周辺に小さな景石を数個配し,いくつかの小庭園が造られていたことを伺わせる。
 本庭園は上記のように,小規模な庭園ではあるが中世末期の戦国大名居館の庭園として,当時の意匠をよく今に伝えて貴重であり,そのまま鑑賞に堪えるほど遺存状況は良好で,名勝に指定し,その保護を図ろうとするものである。

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