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柿右衛門窯跡

かきえもんかまあと

概要

柿右衛門窯跡

かきえもんかまあと

史跡 / 九州 / 佐賀県

佐賀県

西松浦郡有田町

指定年月日:19890922
管理団体名:

史跡名勝天然記念物

佐賀県西部地方には、伊万里市、武雄市、有田町、山内町などを中心として、約五〇〇か所にのぼる近世磁器窯跡が確認されている。とりわけ、伊万里湾に流入する有田川上流域は、泉山磁石場を始めとして、山辺田・原明・天狗谷窯跡等、初期段階の磁器生産から現代に至るまで、わが国陶磁史上有数の窯場を形成している地域である。
 柿右衛門窯跡は、有田町の現酒井田柿右衛門工房裏手にあたる標高八五メートル前後の年木山丘陵西斜面に所在する。昭和五十一年から五十三年にわたり有田町教育委員会によって発掘調査が実施され、並列した二基の窯跡とその両側に物原が確認された。
 窯跡はいずれも段階式連房登窯の構造で、A窯跡は全掘されていないが、胴木間から第一二室までの水平長約四二メートル、平均窯勾配約一一・五度で、窯全体は約六〇メートル規模と推定される。各焼成室は窯尻部に移行するに従って幅を増し、扇状に広がる形態を呈する。B窯跡はA窯跡の北側に並列して構築されており、窯の最後尾が一部削平されているものの、胴木間と二一の焼成室とからなる。窯跡の水平長約八三メートル、平均勾配約一三度で、A窯跡同様窯体の平面形が扇状に広がる形態を取り、両窯跡とも保存状態は極めて良好である。物原部はA・B窯跡の両側に存在するが、規模、遺物の出土量とも北側のB窯跡に接する物原が大きく、厚さが三.八メートルにも及ぶ部分がある。
 窯跡及び物原からの出土遺物には、陶磁器片の他、陶枕、匣鉢、羽間などの窯道具類がある。このうち製品の磁器類は染付、白磁、乳白手、青磁、色絵素地、色絵等多種類に及ぶが、大半は染付によって占められ、色絵素地は少ない。器種は皿、鉢、碗、向付がほとんどであるが、なかでも皿類の出土量が多く、ロクロ成形と型打成形とがみられる。文様は筆勢の軽やかな繊細な線で描かれ、禽獣類、樹花絵、図案風の絵柄が題材として多く取り上げられており、特に、花鳥を描いた皿類に優品が認められる。
 磁器類の全体的特色は、十七世紀後半に確率したとされる柿右衛門様式に属するものである。その開窯時期は窯構造、出土遺物の特色から、最初期の柿右衛門窯とはいえないが、両窯とも十七世紀後半頃に位置づけられ、B窯からA窯に連続して操業されたと考えられる。
 色絵磁器の代名詞のごとくいわれる柿右衛門様式は、染付、白磁、青磁等いずれの技法をみてもわが国を代表する高級磁器で、柿右衛門窯跡はその優品を専業的に生産した登窯である。製品は受注生産を主に、国内においては宮家、公家、諸大名向けに作られ、海外ではオランダ東印度会社を通じ世界各国に輸出されたばかりでなく、ヨーロッパ各地の陶磁生産に大きな影響をあたえた。それまで我が国は、陶磁生産においてアジアの後進国であったが、この時期世界的な陶磁輸出国となった。
 本窯跡は、この柿右衛門様式の磁器生産を代表する登窯として、わが国窯業史上における学術的価値は高く、よってここに史跡に指定し、その保存を図ろうとするものである。

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キーワード

磁器 / / 衛門 / 有田

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