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紙本著色群仙図〈曽我蕭白筆/三十五歳の款記がある/六曲屏風〉

しほんちゃくしょくぐんせんず〈そがしょうはくひつ/さんじゅうごさいのかんきがある/ろっきょくびょうぶ〉

概要

紙本著色群仙図〈曽我蕭白筆/三十五歳の款記がある/六曲屏風〉

しほんちゃくしょくぐんせんず〈そがしょうはくひつ/さんじゅうごさいのかんきがある/ろっきょくびょうぶ〉

絵画 / 江戸 / 関東 / 東京都

曽我蕭白

東京都

江戸/1764

一双

東京都台東区上野公園13-9

重文指定年月日:20050609
国宝指定年月日:
登録年月日:

国(文化庁)

国宝・重要文化財(美術品)

 曽我蕭白【しょうはく】(一七三〇~八一)は、一八世紀の後半期に近畿地方を中心に活躍した個性的な画家であるが、従来指定されている重要文化財はいずれも水墨画であり、今日知られる蕭白の作品の多くが水墨画であることからも、水墨画を主な制作領域とした画家とみられている。
 本図は水墨を主体として描かれた景観に、奇怪な八人の仙人を濃彩で描いている。蕭白の数少ない著彩画の中でも、鳥の羽毛、着衣の文様などに盛り上げ彩色を施し、とりわけ丹念に仕上げられた作品である。また、人物の着衣などに塗られた赤色、鶴などを彩る黄色などに顕著なように、独特の鮮やかな発色の絵の具を用いており、強烈な色彩表現を生んでいる。鉄拐仙人の衣などの奇抜な形態、波を描く特異な線質なども蕭白画の特質を端的に表すものである。
 両隻にわたって描かれた仙人たちは、右隻の鉄拐仙人、左隻の蝦蟇【がま】仙人のように識別できるものもあるが、大半は特定の仙人に同定しがたい。
 流派に属さず、自由な制作活動を行った蕭白の伝記資料は限られており、制作時期の明確な作品もきわめて少ないが、本図は款記により三五歳の作と判明する点で、非常に貴重である。画風の上でも、三四歳の款記がある雲龍図(ボストン美術館蔵)と龍の描写が共通し、款記の書体も、明和元年から二年ころ伊勢に遊歴した際の作といわれる旧永島家襖絵、雪山童子図(松阪・継松寺蔵)などと近似し、同時期とみて矛盾しない。
 蕭白の作風の特色としては、あらあらしく大きな筆致が最もよく知られているが、『近世逸人画史』によれば、「其画変化自在なり。草画の如きは藁に墨つけてかき回したる如きものあり。又精密なるものに至りては余人の企及ぶものにあらず」とある。精密な作風の作品として、近年発見された紙本墨画山水図押絵貼屏風(京都国立博物館蔵)は、水墨画のさまざまな技法を誇示するかのように描き分け、緻密な細部描写をもっている。また、その溌剌とした画趣から、比較的若年期の作とみられる。蕭白の作風展開はまだ明らかではないが、蕭白には細密描写を得意とした面があったことが推測される。
 こうした作品群中、人物描写に見る細密画技法と、背景の山水描写に見る大きく奔放な筆致とを有する本図は、蕭白の「草画のごとき」ものと「精密なるもの」という二つの面を兼ね備えており、蕭白の作風展開における本図の意義は、大きなものがある。
 また、仙人図という中世以来の道釈人物画が、驚くべき明るさの色彩と奇抜な形によって、一八世紀の上方画壇の自由な創造的気運を伝える作品となっている点でも特筆され、蕭白の代表作として高い評価を得ている作品である。
 保存状態は非常によく、絵の具の保存は殊によい。両隻の両端上隅に長い款記があり、右隻に「三十五歳筆」と書している。本図は平成十二年度に、国有品となったものである。

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