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婚礼調度類〈(徳川光友夫人千代姫所用)/〉

こんれいちょうどるい〈とくがわみつともふじんちよひめしょよう〉

概要

婚礼調度類〈(徳川光友夫人千代姫所用)/〉

こんれいちょうどるい〈とくがわみつともふじんちよひめしょよう〉

工芸品 / 江戸 / 中部 / 愛知県

愛知県

江戸

徳川美術館 愛知県名古屋市東区徳川町1017

重文指定年月日:19531114
国宝指定年月日:19960627
登録年月日:

公益財団法人徳川黎明会

国宝・重要文化財(美術品)

寛永十六年(一六三九)九月二十一日、三代将軍徳川家光の長女千代姫が、二歳六か月の年齢で尾張徳川家二代藩主である光友に嫁いだ際に携えた婚礼調度類の一群である。
 本婚礼調度の中核をなす初音蒔絵調度【はつねまきえちようど】は、棚飾りや貝合わせを中心に、諸調度がまとまった大揃いの婚礼調度である。蒔絵の意匠は『源氏物語』初音の巻より取材したもので、殿舎や庭園の景を表し、明石の上が詠んだ「年月を松にひかれてふる人にけふ鶯【うぐいす】の初音きかせよ」の文字(松と鶯は実際のモチーフとして表す)を散らしている。金銀の高蒔絵【たかまきえ】を中心に、金銀の切金【きりかね】や金貝【かながい】、紅珊瑚【べにさんご】などをふんだんに使用した細緻な蒔絵により、優美華麗な王朝世界が表現されている。胡蝶蒔絵調度【こちようまきえちようど】も同様に『源氏物語』胡蝶の巻に取材しており、池に龍頭鷁首【りゆうとうげきしゆ】を浮かべた邸内の様子を表した意匠で統一されている。これら二種の調度類については、幕府のお抱え蒔絵師であった幸阿弥家十代長重の手になることが『幸阿弥家伝書』より明らかとなっている。
 初音・胡蝶蒔絵調度は、卓越した技術を用いあらゆる蒔絵技法を駆使した優品であるとともに、製作者、製作年代、製作の経緯が判明する稀有な例であり、さらには婚礼調度類としてまとまって遺存する最古の一括資料であることから、昭和二十八年に重要文化財に指定されている。しかし、千代姫の婚礼調度類がこれにとどまらないであろうことは、ほぼ同時期の、徳川家光養女亀姫が加賀前田家四代光高に嫁いだ際の三百余種にものぼる婚礼調度類の記録「清泰公諸器帳」に、膳椀具、服飾類、書籍類など多種多様の品々が記載されていることからも推察され、近世大名の婚礼調度の実態を知るうえでは蒔絵香箱以下の品々も欠かすことのできない重要な存在である。かついずれもが寛永期における工芸技術の水準の高さを如実に物語る作品であり、総体として工芸史上、文化史上の記念碑的作例ともいうべき重要な存在意義を有している。

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