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塩山蒔絵硯箱

しおのやままきえすずりばこ

概要

塩山蒔絵硯箱

しおのやままきえすずりばこ

工芸品 / 室町 / 関東 / 東京都

東京都

室町

木製漆塗、長方形、被蓋造の硯箱で、蓋甲の周縁は削面を取る。身の見込みには中央の硯台上部に平壺形水滴を、下には長方硯を嵌め、硯台の左右には大小の懸子を納める。懸子下の上下にあたる見込み四隅には、懸子置きの桟を付け、身の底裏四周は面を取っている。
総体黒漆塗に蓋表裏、身の見込み、側面は平目粉を梨子地風に濃く蒔き、硯台下の見込み部分と身の底裏は淡く蒔く。
(蓋表)下辺には右方に片寄せてX字形に交叉する松の生えた洲浜を配す。左方と下方には三箇の岩を配し、岩の二つには各々「君」「賀」字を配す。洲浜には打ち寄せる波をあしらい、上空には群れ飛ぶ千鳥を表す。松の幹、岩、千鳥の半ばは薄肉高蒔絵、松葉は付描。波は金地に付描。洲浜、岩の頂部、千鳥の半数は銀金貝。岩に生えた芦には銀露玉散らし。洲浜周縁には金切金を置き松之幹、岩にも銀切金を散らす。削面は金地とし、四角及び中央部に松葉唐草文を付描する。蓋鬘は各面とも千鳥三羽を蒔絵。口縁部金地。
(蓋裏)蓋表と逆に、左方に片寄せて洲浜に松を配し、洲浜には打ち寄せる波と岩、上空には群れ千鳥、下辺にも水辺に遊ぶ千鳥をあしらう。図は蓋表に似るが簡略化され、技法面でも松幹、岩のみ薄肉高蒔絵。洲浜は研出蒔絵。樹幹、岩、洲浜周縁に銀切金を散らす。千鳥、松葉、波、芦は付描。
(身見込み)左右懸子下辺に流水付描・左右懸子、硯台上部にわたって群千鳥は薄肉高蒔絵。左右懸子下の身の見込みにも付描で千鳥を配す。身、懸子の口縁部金地。水滴は金銅製で、菊、小刻座二重の座金を嵌めた玉縁の水滴受けに、平壺形水滴を納める。水滴の肩部には洲浜に波、千鳥三羽線刻。硯は口縁金地。側面上部は平目粉を梨子地風に蒔く。身側面は各面とも洲浜に岩、千鳥を薄肉高蒔絵。底裏周縁の削面金地。

総高5.1
(蓋)縦24.6 横22.7 高2.2
(身)縦23.7 横21.8 高4.4 (㎝)

1合

東京国立博物館 東京都台東区上野公園13-9

重文指定年月日:19920622
国宝指定年月日:
登録年月日:

独立行政法人国立文化財機構

国宝・重要文化財(美術品)

室町時代中期のいわゆる東山期には、高度な蒔絵技術が発展した。それとともに意匠面においても、物語や和歌といった古典に因んだ歌絵意匠が盛行し、多くの名品が生み出された。
 本硯箱もその一例で、千鳥の群れ飛ぶ磯辺に松の図様と、図中に配された「君」「賀」の文字から、『古今和歌集』巻第七「賀歌(読人しらず)」のうち、
 しほの山 さしでのいそに すむ千鳥 きみがみよをば やちよとぞなく」の歌意、歌枕である「塩山」の情景を意匠化したものと知られる。
 各種の蒔絵技術に金貝を駆使した巧緻な技法とともに、蓋表から蓋裏・身の内面へと連関する巧妙で洗練された意匠構成になり、かつ閑雅な風情をたたえた硯箱の優品である。

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キーワード

硯箱 / / 蒔絵 / 高蒔絵

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