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銅造薬師如来坐像

どうぞうやくしにょらいざぞう

概要

銅造薬師如来坐像

どうぞうやくしにょらいざぞう

彫刻 / 鎌倉 / 関東 / 東京都

東京都

鎌倉

1躯

東京都台東区上野公園13-9

重文指定年月日:19880606
国宝指定年月日:
登録年月日:

国(文化庁)

国宝・重要文化財(美術品)

 左手先と右手のすべてを別鋳とする銅造の薬師如来坐像である。
 薬壺を載せる左手先の当初のものは失われ、現在、木で補作されているが、一具同作とみられる銅製光背には七躯の薬壺を持った薬師如来が配されており、いわゆる七仏薬師像として造られたものと考えられる。
 二重円相内に透彫の宝相華樹を立ち上らせ、葉の先端を火焔状に表わして、外縁を構成する光背の形式、宣字の形を示す台座上に裳を懸けた、いわゆる裳懸宣字座は、奈良新薬師寺の本尊木造薬師如来坐像(国宝)のそれに似てきわめて古式である。
 しかし、本体の端正な相貌や引き締まった体躯、動的で深い衣文の彫りなどには鎌倉時代十三世紀頃の南都仏師の作風が顕著に認められる。
 仏師善円が嘉禄元年(一二二五)に造った東大寺釈迦如来坐像(重文)は、その類似の一例としてあげうるが、この像に比べると、やや形式化がすすんでいるかに眺められる。
 像高一四・一センチの小品でありながら、右手や左手先を別鋳とする技法も当代金銅仏の傾向を示すもので、薄く均一に、しかも像内まで滑らかに鋳上げられた本体には、堅実な鋳技がうかがわれ、宝相華樹を打ち抜き、あるいは台座の文様を刻出するタガネの使用も巧みで、この種金銅仏の美作として高く評価し得る。
 制作の時期は十三世紀半迄は下らぬと思われるが、奈良興福寺旧蔵であったことを思えば、当寺の鎌倉復興期の造像遺品の一かと推察される。
 既述した左手先の他に、台座下框の中・下段が木製後補であるが、仏・光・座をほぼ完全に伝存する当代七仏薬師像の稀有の遺例としてその存在価値はきわめて高い。

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