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比良山蒔絵硯箱

ひらさんまきえすずりばこ

概要

比良山蒔絵硯箱

ひらさんまきえすずりばこ

漆工 / 江戸 / 関東 / 東京都

東京都

江戸

木製黒漆塗りで、四方をわずかに角切とした方形被蓋造りの硯箱である。蓋甲周縁を面取りとし、蓋口辺には玉縁が細く作り出され、廻らされている。蓋には、表裏で異なる二つの情景が描かれている。蓋表の図は、近景として梨子地による洲浜が表され、その向こうに研出蒔絵に付け描きを加えてさざ波の立つ湖面の様子が表されている。その波間には桜花の漂う湖面を一艘の舟が漕ぎ渡る様が薄肉高蒔絵を用いて表され、舟の舷側および艫の表現に微細な銀切金が配されている。また、遠景にはたなびく霞の向こうにそびえる山並みとその山麓に咲きにおう桜樹の木立が点在する様子が薄肉高蒔絵と研出蒔絵を用いて描かれている。蓋裏の図は、洲浜に大きく枝を張る老松とその根元に鎮座する小さな祠と鳥居の立つ情景が、蓋表と同じく、梨子地に薄肉高蒔絵と研ぎ出し蒔絵を用いて表され、老松の幹には、銀切金が細かく配され、松の樹肌が精緻に表されている。さらに、見込には手前の洲浜から前方の湖面へと広がるが、枠下水と連続した表現で配されている。
 内容品として、身の見込には枠下水を付置して中央に長方形硯石を嵌め、金地に付け描きで波文を描いた下水板上区の中央に銀製の杭を立てて受け座とし、四分一製に一部鍍金を施した苫舟形水滴が据えられている。また、柄を金地無文とした細筆が一本納められる。
硯下の見込中央に朱文方印に擬した朱漆による微小な落款が表されている。銘文「鹽見政誠」

縦24.8㎝ 横22.9㎝ 高4.8㎝

1合

東京国立博物館 東京都台東区上野公園13-9

重文指定年月日:20100629
国宝指定年月日:
登録年月日:

独立行政法人国立文化財機構

国宝・重要文化財(美術品)

江戸時代を代表する蒔絵師の一人である塩見政誠の作として評価されてきた硯箱である。さざ波の湖面の中央を漕ぎ渡る舟、水面に漂う桜の花びら、遠景に霞む連山の重なりなどを金の研出蒔絵と薄肉高蒔絵にて精細に表現している。
 本作品は、和歌に典拠した意匠による中世以来の伝統的表現様式を継承しながら、江戸時代の特徴でもあるより精緻な表現技法として発展させた確かな漆工技術によって製作された優品であり、貴重である。

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キーワード

蒔絵 / / 高蒔絵 /

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