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旧池田氏庭園

きゅういけだしていえん

概要

旧池田氏庭園

きゅういけだしていえん

名勝 / 東北 / 秋田県

秋田県

大仙市高梨・払田

指定年月日:20040227
管理団体名:大仙市(平16・3・26)

史跡名勝天然記念物

 池田氏庭園は仙北平野のほぼ中央部に位置し、約4haの敷地は東に奥羽山脈、西に神宮寺岳、南西に鳥海山を遠く望む広大な田園地帯に囲まれている。
 池田氏はその始祖を、享保年間(1716-35)、高梨村肝煎孫左衛門にさかのぼると伝えられ、近代においては戦前まで村長を務めるとともに、山形県の本間氏、宮城県の斎藤氏と並んで東北三大地主として知られた。本邸を造営した第13代当主の文太郎は、学校、保健衛生施設及び農村共同施設等の建設をはじめ、私財を投じて数多くの事業を展開し高梨村の発展に大きく貢献した。庭園は、明治29年(1896)の震災により家屋が倒壊したのを機会に、耕地整理事業と合わせて所有地を集約・整理して屋敷地を拡張するとともに、東北地方をはじめ日本各地において公園及び個人住宅の造園を手がけた近代造園の祖、長岡安平の助力を得て明治時代末頃までに基本的な地割が造営され、大正年間におおむね完成したものである。
敷地は家紋に倣って亀甲の平面形を成し、周囲は石垣を伴う濠及び土塁で区画するもので、仙北平野を特徴づける屋敷林を伴う散居の中でもとりわけ規模の点において傑出した景観を有する。耕地整理以前の屋敷地の範囲に主屋及び土蔵等を配した居住区域を流れ及び水路で囲み、主屋の南西に園池を設けて主庭園としている。敷地北半の流れを挟んで居住区域の周辺を取り巻く区域には、各所に瀟洒な築山及び滝口を設け、石燈籠、景石のほか、プール、運動広場などを配して、散策や運動を楽しむ構成としている。薬医門から敷地北半中央の主屋に至る導入部及びこれに沿う水路の南側の区域にはかつて家畜小屋、馬小屋、果樹園、菜園のほか、武道館、温室など、池田氏の豊富な財力及び農村地域における高い家格を示す諸施設が設けられていた。主屋が戦後の火災で失われたのをはじめ敷地南半の諸施設の多くは失われているが基礎等は良好に遺存しており、現存する洋館、薬医門及び5棟の土蔵とともに当時の主要な屋敷地の構成をよく伝えている。
 主庭園は中央に中島、西岸に巨大な雪見燈籠を配した浅い園池を中心とし、南畔には洋館を設けている。洋館は秋田県下で最初の鉄筋コンクリート造で、白い壁と赤い屋根の外観を基調とした優れた意匠・内装等を有する2階建ての建築であり、大正11年(1922)に私設の公開図書館として建設された。雪見灯籠は高さ及び笠の直径ともに約4mを計り、他に類例を見ない巨大なもので、当時の有産階級の趣味を反映しているとともに印象的な主景物となっている。
 本庭園は広大な田園地帯に営まれた特徴ある平面形状の大規模な敷地全体に園池及び流れ等を巡らせた独特な地割を有するとともに、洋館及び大型の雪見燈籠を配する主庭園の景観は他に類例を見ないものであり、観賞上の価値は極めて高い。また、長岡安平がその築庭に関与した現存する数少ない優秀かつ貴重な事例であり、学術上の価値は極めて高い。よって名勝に指定し、保護を図ろうとするものである。

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キーワード

園池 / 庭園 / 流れ /

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