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市場に赴く農民のいる風景

いちばにおもむくのうみんのいるふうけい

概要

市場に赴く農民のいる風景

いちばにおもむくのうみんのいるふうけい

油彩画

ブリューゲル、ヤン(父)  (1568-1625)

ぶりゅーげる、やん(ちち)

フランドル

1598年

油彩、銅板

18.0×26.0cm

1

作者は16世紀フランドルの大画家であるピーテル・ブリューゲル(父)の次男で、4歳年上の兄ピーテル・ブリューゲル(子)とともに、偉大な父の絵画世界を引き継ぎ、次世代に展開した。父の芸術上の遺産を継いだとはいえ、父はヤンが2歳の時に逝去しているので、父から直接に技術を学ぶということはなかった。兄が得意とした「記述的」ともいえる形式的な父の模倣に対し、ヤンは個性的で豊かな作品を描き、そのきめの細かい滑らかな画面から「ビロードのブリューゲル」とも呼ばれる。ルーベンスと親交があり、二人の共同制作も残されている。 ブリュッセルに生まれたヤンは、生涯をアントウェルペンで過ごしたが、1590年代の前半はイタリアに滞在し、ローマでフェデリゴ・ボッロメーオ枢機卿の庇護を受けた。1595年には枢機卿とともにミラノに移ったが、翌1596年になってようやくアントウェルペンに戻り、この地で画家として大成功を収めることとなる。 本作はこのアントウェルペン時代初期にあたる1590年代後半の様式を垣間見せる小品のひとつ。イヴォンヌ・ティエリによれば、この同じバージョンが他に3点存在するという(1600年制作のハノーヴァー美術館蔵の作品、1601年制作の個人蔵の作品、1603年制作のウィーン美術史美術館蔵の作品)。本作はこれらの中ではいちばん最初の作品であるということになる。 収穫物を市場へ運ぶ途中、峠の大きな樹木の下で休息する農民の一群。このように小さく、はっきりとした人物を近景左手に配し、遠景右手の眼下に広がる町並みをぼんやりとして青味がかった色調の空気遠近法で俯瞰的に描いた構図は、作者の最も成功した風景画のスタイルであった。

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