Work 84-P-1
概要
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Work 84-P-1
Work 84-P-1
1984年
油彩・麻布
194.0×130.0cm
1984年 第2回富山国際現代美術展
1984年東京国立近代美術館で開かれた「メタファーとシンボル」展に出品された作品である。画面右方ではじまった、明るい青を地に反復される装飾的パターンが、突然、暗闇に侵食されたかのように破局をむかえることで、秩序だって明晰な右半分と、無秩序で混沌とした左半分が、いかにも暗示的なかたちで対比される。左右のこうした対比にはむろん、かつての横縞作品における左右の概念的な対比の反響があるといえよう。しかし、ここではむしろ、「描くこと」そのものが問題となっており、それまでの辰野の大きな特徴となっていた理知的な装いが後退しつつある。それと同時に、たとえば花柄の模様など、ある種の原型的なモチーフの偏愛がみられることは興昧深い。いかなる局面をとるにせよ、「描くこと」にはある形象ないしイメージ、あえていうならば象徴的なものが去来してやまない。辰野登恵子はいわば絵画の本質、原点を探っているのである。