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虫魚画巻

概要

虫魚画巻

日本画

小茂田青樹  (1891-1933)

オモダ、セイジュ

昭和6年/1931

彩色・紙本・画巻・1巻

50.5×981.8

18回再興院展 東京府美術館 1931

20
虫魚画巻
Scroll of Insects and Fishes
1931年
紙本彩色・画巻50.5×981.8cm
院展への最後の出品作となったこの画巻は、蛙、夜の蜘蛛、鯉と金魚、灯に集まる昆虫、鰻とどじょう、軒下の蜘蛛の6図からなっている。全巻を通じて対象への写実的なアプローチが、とぎすまされた感覚世界を開いている。ただし、写実といっても、現実という実在の世界を対象とするのではなく、事物を存在の事実へと還元していく方向である。
この画巻の制作からまもなく病再発、転地療養のかいなく、2年後、42歳で世を去る画家は、すでに死を見つめつつ、存在へのとぎすまされた感覚をもっていたといえよう。画家はすでに風景画において独自の感覚表現を見せていた。そこでは、実在世界と不可視の存在とが重なりあい、アニミスティックな緊張関係がかもされていたが、この画巻では、もはや現実の世界は画家の容れるところではなく、存在の事実そのものを求めて、虫や魚といった事物のうちに沈潜する徹底した写生に終始した。現実という一つの世界が失われた暗黒の中で事実としての存在そのものが妖しく浮かびあがっている。この無音の感覚世界の妖しさは、意味の空虚にほかならぬ事実としての存在が、おのずから虚無感と背中あわせであることによる。意味によって世界としてなりたつ現実を鵜呑みにせず、事物に沈潜した場合、写実は、空虚と背中あわせの冴えた感覚世界をつくりだすことになった。第18回院展出品作。

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キーワード

画家 / 現実 / /

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