深鉢形土器
ふかばちがたどき
概要
安道寺遺跡は、甲府盆地北東部の台地上に立地する縄文時代中期の集落遺跡で、17号住居跡内の土坑から出土した深鉢形土器である。
きわめて大形の深鉢形土器で、底部は平底である。渦巻文や円形文・蛇行文などが複雑に施文される四単位の大仰な把手が最たる特徴で、こうした過剰な装飾が器面を埋めている。この特徴は、中部高地を中心に分布する縄文時代中期後半期の曽利式土器に特有で、把手装飾などの諸特徴から「水煙文土器」と呼称され、曽利式の初期段階に位置付けられている。大きさに対し、9割が残る遺存状態は特筆される。
また、他の深鉢形土器1箇と別個体の把手4点が、共に埋納された状態で発見されている。
本深鉢形土器は、曽利式土器の研究における基準資料であり、埋納という象徴的な出土状況は縄文土器の儀礼的利用の実態をよく表している。姿形の卓越性、複雑な文様の装飾性は、中部高地における縄文時代の造形技術の極致と言えよう。
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