d) 保存修復のための措置及び管理計画 i) 法隆寺地域の建造物の管理
 世界遺産に推薦する法隆寺地域の仏教建造物は、すべて国が文化財保護法により国宝・重要文化財に指定している、それらの維持管理や修理は所有者である宗教法人がおこなうが、必要な保存修理・防災などのための技術上の指導と財政補助は国が与えている。木造建造物について最大の問題である火災に対処するために、自動火災報知設備・消火栓設備・避雷針設備を設置し、法隆寺・法起寺による自衛消防隊を結成し、公共消防隊と協力する体制をつくっている。また、法隆寺区域は国が史跡に指定し、地上の建造物と地下の遺構の保存をはかっている。さらに、現地に法隆寺文化財保存管理事務所を設置し、それによって区域内の清掃や警備、樹木の手入れ、保存設備の維持管理などに当り、これにも国が一部分を財政的に援助している。
 国宝・重要文化財ならびに史跡は国の許可なく現状を変更することはできない。国は建造物・地下遺構の保存や景観上の調和などに留意する方針によってそれに対応している。
 指定建造物の大半は所有者である寺院が年間を通じて広く一般に公開している。また、法隆寺はそれが所蔵する美術工芸品や歴史資料の収蔵公開施設や来訪者用の駐車場を設け、公開活用を図っている。

付属資料14
法隆寺地区保存設備配置図
14a 火災報知設備配置図
14b 消火栓配置図
14c 避雷設備配置図
14d 活用関係施設配置図

ii) 緩衝地帯の管理
 法隆寺地域とその緩衝地帯一帯は、「古都における歴史的風土の保存に関する特別措置法(古都保存法)」の規定に基づいて1966年に国が斑鳩町歴史的風土保存区域として指定し、また「奈良県風致地区条例」に基づいて1966年に奈良県が斑鳩風致地区として指定し、全域の歴史的風土と自然環境の保全を図っている。
 歴史的風土保存区域のうち、法隆寺境内とその後背地の丘陵部はその特別保存地区に指定され、建築物の新築や宅地造成などの土地の形状を変更する行為を規制し、さらに必要に応じて土地の公有化をおこなう、その他の歴史的風土保存区域においても、歴史的風土の維持保存に反する行為を規制し、違反者を罰する規定がある。また、この区域のほとんどは都市計画では市街化調整区域となっている。
 斑鳩風致地区は1〜3種に区分される。1種地区は歴史的風土の特別保存地区に一致し、建築物の高さ(最高8m)を制限し、緑化を図っている。また、その周辺にあたる2・3種地区についても、それぞれの基準を定めて風致保全のための罰則のある規制を行っている。
 この地域を含む斑鳩町域については「都市計画法」に基づいて斑鳩町が都市計画区域と用途地域の指定を1989年におこなっている。推薦地域の全部と緩衝地帯のほとんどは市街化を抑制する区域である。緩衝地帯の南端にわずかにある市街化区域も、住宅地として文化遺産に調和した環境を保持することとなっている。

付属資料4
遺産内外の法的保護区分図

付属資料15
都市計画図
e) 地域開発計画等  文化財保護や緩衝地帯に影響のある計画は現在ない。


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