5. 世界遺産一覧表に記載する価値があることの証明
a) 世界遺産価値基準に適合する根拠及び他の同種遺産との比較 |
法隆寺西院の金堂・五重塔・中門・回廊・法起寺三重塔などの8世紀以前の建造物11棟は、現存する世界最古の木造建造物である。価値基準Ⅲに該当する。
これらの歴史的建造物は、全体のデザインのみでなく、エンタシスをもつ太い柱、雲形の肘木や斗などに代表される細部のデザインにおいても、洗練された芸術的に優れたものであり、価値基準Ⅰに該当する。
これら建造物のうち、7世紀から8世紀はじめに建造された金堂・五重塔・中門・回廊は、石窟寺院や絵画的資料からうかがうことのできる6世紀以前の中国の建造物と共通する様式上の特色を備えている。これに対して、それらに引き続いて8世紀のうちに建立された経蔵・食堂・東大門や東院の夢殿・伝法堂では、新しい唐の様式の影響を認めることができる。このように、法隆寺地域の仏教建物は、当時の中国と日本の間、ひいては東アジアにおける密接な文化交流の証人となっている。さらにまた、1地域のなかに7世紀以降19世紀に至る各時代の優れた木造建造物が集中して保存されている点でも他に類例がなく、日本の、そして東アジアの木造の仏教寺院の歴史を物語る文化遺産がここに統合されているといってよい。この点で価値基準Ⅳに該当する。
仏教がインドから中国朝鮮を経由して日本に伝来したのは6世紀中頃である。聖徳太子は当時仏教の普及にきわめて熱心であり、太子ゆかりの法隆寺は日本に伝来した仏教の最も古い建造物を多数保存しており、宗教史上も価値が高い。価値基準Ⅵに該当する。
法隆寺地域の仏教建造物は、日本における仏教建造物の最古の例として1,300年間の伝統のなかでそれぞれの時代の寺院の発展に影響を及ぼしており、日本文化を理解する上で重要な遺産となっている。価値基準Ⅱに該当する。
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