5. 世界遺産一覧表登載への価値の証明
a) 世界遺産価値基準に適合する根拠及び他の同種遺産との比較 |
厳島神社は、12世紀に時の権力者である平清盛の造営によって現在みられる壮麗な社殿群の基本が形成された。この社殿群の構成は、平安時代の寝殿造の様式を取り入れた優れた建築景観をなしている。また、海上に立地し、背景の山容と一体となった景観は他に比類がなく、平清盛の卓越した発想によるものであり、彼の業績を示す平安時代の代表的な資産のひとつである。このため、価値基準(i)に該当する。
厳島神社の社殿群は、自然を崇拝して山などを御神体として祀り、遥拝所をその麓に設置した日本における社殿建築の発展の一般的な形式のひとつである。背後に山をひかえ、前面が海に面するという、周囲の環境と一体となった建造物群の景観は、その後の日本人の美意識の一基準となった作品であり、日本に現存する社殿群の中でも唯一無二のものである。日本人の精神文化を理解する上で重要な資産となっている。そのため、価値基準(ii)に該当する。
これら建造物群のうち、13世紀に建造された本社幣殿、拝殿、祓殿、摂社客神社の本殿、幣殿、拝殿、祓殿は、各々が造営当時の様式をよく残し、日本に現存する社殿建築の中でも鎌倉時代に建築された数少ない建造物となっている。度重なる再建にもかかわらず、平安時代創建当初の建造物の面影を現在に伝える希有な例である。また、海上に展開する社殿群は、周辺の自然と一体となった環境をもち、平安時代の寝殿造の様式を山と海との境界を利用して実現させた点で個性的である。
このように、厳島神社の社殿群は平安時代から鎌倉時代にかけての様式を現在まで継承し、自然崇拝から発展した周囲の景観と一体をなす古い形態の社殿群を知る上で重要な見本である。この点で価値基準(iv)に該当する。
厳島神社は、日本の風土に根ざした宗教である神道の施設であり、仏教との混交と分離の歴史を示す文化資産として、日本の宗教的空間の特質を理解する上で重要な根拠となるものである。このため、価値基準(vi)に該当する。 |