片倉館は、諏訪湖周辺を本拠地として製糸業を営んだ片倉家が公共の福利厚生施設として建設した温泉施設で、昭和3年に竣工した。
森山松之助の設計で、浴場と会館は、急勾配の切妻屋根とタイル張の外壁とし、要所に尖塔をたてるなど変化に富んだ外観になる。
浴場の内部は、大浴室を中心にステインドグラスや彫像などで華やかに飾り、また会館の内部は150畳敷の大広間(おおひろま)を中心とした伝統的な和風のつくりとする。
片倉館の建築は、独創的な意匠をもち、内外装飾の密度も高く、近代におけるわが国建築家による洋風意匠の展開を示す建築のひとつとして重要である。また、実業家の手による最初期の公共の福利厚生施設として、高い歴史的価値を有している。