侯爵鍋島直大が自身の詠歌を書した作品。制作年代は明治30年(1897)に直大が正二位に叙されているためそれ以降と分かるが、直大自筆の「戦時歌集」には日露戦争時のものとして次の和歌が掲載されている。
このころ戦争初まり献金公債等の事ありたるとき、家といふ事の歌の御題ありたれば
とほつ親の なせるいさをに もとりなく 守るは家の ほまれなりけり
「なせるいさをに もとりなく」は、書幅では「たてしいさをゝ きすつけす」とされているが、おおよそ明治30年代後半以降に書したものとみられる。直大は、先祖の勲功とそのお蔭で在る今の家を守り続けることが侯爵鍋島家にとっての誉れであると考えていたことを示す。