鍋島直大(旧佐賀藩主)が明治13年(1880)に鍋島家の家政運営等について定めた条目。第一項第一条でその目的について「大政維新版籍奉還ノ後、家声ヲ保存シ且堅固ナラシメン為メ」と述べ、「家声」の維持向上を目的としていることがわかる。これに続けて、「祖宗以来ノ家法ニ遵ヒ、更ニ現今ノ情勢ニ酌定シ已ヲ得サルモノヲ改修シ、之ヲ祖宗ノ廟前ニ誓ヒ我等及ヒ相続ノ子々孫々ニ傳ヘ遵守スル所ニ家法條目ヲ定ム」とし、祖宗以来の家法を基本路線として継承する旨を示している。目的に挙げられた「家声」については跋文で、「家声を美にするは朝恩に答ふるの基」であるといい、「皇室に無窮に事ゑんと欲す」との希望で締め括られている。華族として皇室に仕えることが鍋島家の第一義であり、それは家を守ることと表裏一体であった。
2種(三冊)の概要は以下の通り。
(一)家法條目 第一項綱領(上記)のほか、第二項「継統ノ事」、第三項「家政相談人ノ事」、第四項「相談人職掌ノ事」、第五項「相続人集会ノ事」、第六項「特別会議ノ事」、第七項「令扶従等人選ノ事」、第八項「家政顧問ノ事」、第九項「財産ノ事」、第十項「会計ノ事」までの41ヵ条および追加一条のあわせて42ヵ条から成る。甲本・乙本があり、両本とも同一内容だが甲本だけ巻末に特命全権公使としてローマに出発する直前にあたる「明治十三年六月六日 従三位鍋島直大(印)」と記されている。
(二)家法條目追加 内題には「追加案」とある。民法上後見人に関する事項が生じたためとして、第四十三~四十六条の4ヵ条が記されている。巻末に「明治二十七年三月 従二位鍋島直大」。