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オレンジ
Orange
1973年
油彩・麻布
206.5×168.0cm
1974年「アメリカの日本作家」展(京都国立近代美術館)岡田謙三が1950年代初期にニューヨークにおいてそれまでの具象的な画風を清算して抽象画に踏み込んだのは、いうまでもなく当時のアメリカの抽象表現主義の刺戟を受けたからでもある。しかし、彼はアメリカの環境に身を置くことによって、かえっていっそう強く日本や東洋の精神と造形感覚を意識するようになったようで、彼が当時「ユーゲニズム(幽玄主義)」をしきりに唱えたのも、その明白なあらわれであり、また、1950年代の繊細で情感に富んだ色調と画面空間のなかに浮遊する形象が自然のゆるやかな移ろいを感じさせる彼の作品は、明らかに抽象表現主義の絵画とは一線を画すものであった。こうした特質はその後の作品にも、もちろん一貫して認められるものだが、そのなかには中世以来の日本の大和絵などの装飾的造形法の再解釈から出発している場合も少なくなく、この《オレンジ》などもその典型的な作例ということができる。