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駒井哲郎(1920−1976)
KOMAI,Tetsuro
足場
Scaffold
昭和17(1942)年
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駒井哲郎(1920−1976)
KOMAI,Tetsuro
夜の森
Forest at Night
昭和33(1958)年
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駒井哲郎り(1920−1976)
KOMAI,Tetsuro
蝕果実(Juin 球根たち)
Eroded Fruits (June: Bulbs)
昭和35(1960)年
駒井哲郎は日本版画協会や春陽会を舞台に活躍したばかりでなく,さまざまな国際展の受賞も重ね,さらに東京芸術大学ほかで後進を育成して,日本における銅版画の確立と発展につとめ,今日の銅版画隆盛を導いた功績が大きい。駒井は「銅版詩人」と呼ばれるに相応しく,繊細な感受性と詩的幻想を本質としている。《足場≫は初期作品のうちの一点で,フランスの銅版画家シャルル・メリヨンの影響が見られ,腐蝕法とはいえ線を基調とするエッチングによる緻密な細部描写からなる繊細な風景画である。これに対して戦後の作品≪夜の森≫は面を強調するアクアチントの技法により,闇の大気に幾何学的な形象が浮遊する詩情豊かな幻想風景である。アクアチントとエッチング併用の銅版画≪蝕果実≫は,版と果実の両方の腐蝕を暗示するが,内部から後ろまで透け通って見える不思議な透明感を持っている。またこの作品は詩人安東次男との合作『詩画集 からんどりえ』に含まれ≪六月 球根たち≫と題されている。(K.T.)