木造阿弥陀如来立像 もくぞうあみだにょらいりゅうぞう

彫刻 / 鎌倉

  • 鎌倉 / 1203
  • 1躯
  • 重文指定年月日:20050609
    国宝指定年月日:
    登録年月日:
  • 西勝寺
  • 国宝・重要文化財(美術品)

 髪際で三尺を測る阿弥陀如来立像である。像内に納入されていた木札の銘記および梵字宝篋印陀羅尼【ほうきょういんだらに】の奥書により建仁三年(一二〇三)に三善為清を願主として造立されたことが知られる。三善為清は『玉葉』治承三年(一一七九)一月の除目の記事に日向権介、正六位上として名の見える人物に当たるかとみられる。
 頭部は、椀を伏せたような肉髻の形や小粒で整然と刻まれた螺髪、円満な輪郭をもつ面貌に表される小作りの目鼻立ちに平安後期の風が顕著であるが、両目の見開きがいくぶん強く、口許を引き締めた表情にはやや意志的なものも感じさせ、そこに鎌倉時代的な特色がうかがえる。体部もまた、肩から上膊にかけての輪郭線が丸みを帯び、肘幅を広くとり胸の薄い躰型や、浅く整えられた衣文線など、その造形の基本を前代以来の定朝様に拠りながら、肉付に抑揚を増し、左肩から正面を下りる衣縁を微妙に波打たせるなどの点には新時代の要素が現れている。
 檜材(か)の割矧造になり、体部背面を背板風に割って内刳し、割首のうえ頭部を前後に割矧ぐのは平安後期から鎌倉時代にかけての通途の造法であるが、足首以下を裙底面から割離す点にやや特色がある。この種の技法は平安後期以来行われているが、本像は基準作例で早期のものとして注目される。なお表面仕上げは肉身部漆箔、衣部古色塗とするが近年のものである。
 この時期としては保守的でかつ優れたその作風からみて、作者は京都の主流仏師と考えられ、中でも院派系統である可能性が高いと思われる。本像は鎌倉初期における京都仏師の手になるとみられる基準作例として重要であり、玉眼嵌入技法の奈良仏師以外への波及のさまをうかがう上でも見逃し難い一例と考えられる。また附指定する銘札【めいさつ】および宝篋印陀羅尼は本像の造立事情を記すのみならず、当代における像内奉籠の一典型を示す点で貴重といえる。

木造阿弥陀如来立像

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