この雛段飾りの所用者は11代鍋島直大夫人栄子。永徳斎作の有職雛や明治40年(1907)直大の還暦祝いに御夫妻で新調された次郎左衛門雛、丸平大木人形店の三人官女、丸々と愛らしい御所人形、珍しいブランコ乗り人形や毛作り人形など。また大名家の雛道具は姫君の豪華な婚礼調度を精緻に小型化たもので、栄子の雛道具は一般的な牡丹唐草の意匠がほどこされる。鍋島家伝来の雛道具の中では数量が最も多く、二~三組が一括されている。全体的に小振りで、御道具の種類は御膳具、化粧道具、旅道具、遊戯具、文房具、楽器など多岐にわたる。いずれも鍋島家へ嫁いだ後に、誂えられたものと考えられる。