正宗寺は鎌倉時代後期の草創になり、現在は臨済宗妙心寺派に属している。方丈障壁画は現状では全て掛幅に改装されており、そのため一部を除いては大変保存状態が良好である。本寺に長沢芦雪の障壁画が伝えられるのは、中興の祖、萬年和尚と妙心寺海福院の斯経和尚との交遊によるものと考えられる。その制作年代は筆太な草体による款記や、魚印の右肩が欠失している点からみて、芦雪の晩年の作と思われ、薬師寺障壁画と大乗寺の群猿図襖の間をつなぐ大作として重要である。中でも室中の間のために描かれた波濤図および、下間二之間の楠に鶴図に奇才芦雪独得の境地が窺われる。