現在称名寺金堂内に所在する須弥壇・堂内具類である。須弥壇は、中心の軸部を臼形に窄めた形で、鎌倉時代の作とされる神奈川県円覚寺や建長寺の須弥壇と同じく禅宗様の典型であり、また同様式の礼盤は希少である。力強いふくらみを示す伏蓮を有する大壇は、根本様華形壇と称されるが、迎・伏蓮の間に刳形部材を重ねており、やはり禅宗様の影響が認められる。磬架は刳形脚や横木が薄造りで、架木・柱も細めで古様である。肩の張った刳形の格狭間【こうざま】を透かす机もまた同様である。
これらが所在する金堂は、天和二年(一六八二)の改築を経ているが、その創建は、「金堂木作始番匠引物注文」により文保元年(一三一七)に着工され、金堂が図示される「称名寺結界図」(元亨三年・一三二三裏書)が作成された間に竣工したと考えられている。したがって金堂造り付けの須弥壇をはじめ、他の堂内具の作期も、この時期を中心に考えられる。
総体に黒漆塗りで、面取部に朱漆を塗るほかは、磬架に散蓮華文線刻の金銅金具を打つのみで簡素な造りではあるが、類例の少ない禅宗様須弥壇・大壇・礼盤を含む堂内具類の希少な一括遺例である。