平安時代天治元年(一一二四)に書写されたいわゆる「天治本万葉集」巻第十五の残巻で、首尾を欠するが、八紙五十八首を存している。「天治本万葉集」は、平安時代書写の『万葉集』の一つとして文学史上に著名であるが、多くは断簡となっており、本巻は近時新出のもので比較的大部を残していて注目される。
本文は真名本文と平仮名訓が並記されるが、長歌のうち二首には平仮名訓がなく、後筆の朱で片仮名傍訓、句切点が付され、また本文中には江本(江家本)、孝本(孝言本)等諸本による校合等の注記があり、『万葉集』研究上に貴重である。