刺繡種子阿弥陀三尊図
ししゅうしゅじあみださんぞんず
工芸品 / 南北朝
- 静岡県
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南北朝時代
- 掛幅装仕立て。本紙部分に阿弥陀三尊の種子を中心に、天蓋・色紙形や[蝶形三足卓]を、刺繍によって表した繍仏で、本紙部分はもとより、天地や中廻しといった表装部分にも各種の文様意匠が刺繍された、いわゆる総繍の作品である。
本紙部分中央の三尊種子は上段が「ア」、向かって右下が「サ」、左下が「サク」で、順に阿弥陀・観音・勢至の阿弥陀三尊を表している。本紙部分上部中央には天蓋を配し、その左右には色紙形を設けて以下の偈を記している。
「極重悪人 無他方便/唯称弥陀 得生極楽」
(向かって右)
「光明遍照 十方世界/念仏衆生 摂取不捨」
(向かって左)
本紙部分の下部三分の一は地に石畳文を表して床とし、中央に芒や蓮華を活けた花瓶と、煙を上げる香炉を安んじた蝶形三足卓を据えている。天地には蓮華唐草文を表し、中廻しと中廻しの柱には麻葉繋文を地文として円相内に納まる種子「ア」を四八か所廻らせている。
総体の刺繍は、萌黄・濃萌黄・浅葱・縹・紺・紫・紅・黄・白などの平糸・撚糸のほか毛髪を用い、面部は平繍いや刺し繍いで埋めて返し繍いや纏い繍いで輪郭をとるという技法が主であるが、阿弥陀三尊の蓮華座や天蓋・三足卓上の蓮華などは暈繝繍い、中廻しや床の地文は割付繍いを用い、種子・三足卓の一部・色紙形の文字は髪繍としている。
軸木両端には金泥で蓮華座を描いた紺紙を貼って、蓮華座上に舎利一粒を納入し、金銅製蓮華唐草文透彫覆輪をはめた円筒形水晶をかぶせている。また八双には金銅蓮華形吊金具を打っている。
- 総縦155.5 総幅(軸長)47.8 幅(軸除く)43.9
本紙部分縦70.1 本紙部分横36.6(㎝)
- 1幅
- MOA美術館 静岡県熱海市桃山町26-2
- 重文指定年月日:19970630
国宝指定年月日:
登録年月日:
- 世界救世教
- 国宝・重要文化財(美術品)
阿弥陀・観音・勢至の種子および三足卓(みつあししょく)上の花瓶・香炉などを、多彩な色糸に一部毛髪を交えた刺繍で表した繍仏で、本紙部分はもとより中廻し(ちゅうまわし)や柱にも刺繍をほどこしている。細部の表現や繍技は破綻なく細緻で、かつ全体の保存状態も良好な種子繍仏の優品である。