声明とは、仏教の経文を音楽的に歌唱するもので、初めはインドに興り、中国を経て、渡来僧や入唐僧の努力により我が国に伝来したもので、讃、唄、散華、錫杖、教化、講式等の多種多様な歌曲を含んでいる。我が国においても、各宗によってその歌唱法がいろいろと相違するが、天台声明と真言声明とがその母胎となっている。
声明の曲節は、和讃から今様唄、御詠歌、子守唄、薩摩琵琶の吟替り、及び天台声明の六道講式に説経などを採り入れた平曲、声明の講式や論義からうけるところ多いと見られる謡曲、また説経、平曲を通じて声明の影響を受けた浄瑠璃や長唄、更には祭文、歌祭文、阿呆陀羅経、チョンガレ節、浪花節、民謡などに大きな影響を与えたものであり、音楽史上貴重なものである。仏教の諸種の儀式の簡素化に伴い、これに使用される声明も、長年の間には廃曲となってしまうものも数多くある。