1974(昭和49)年にパリで開催した「花とベネチア展」の成功後、作者は、ブルゴーニュ地方の小村ヴェロンの農家を買い取り、アトリエ等に改築して住むようになる。その前に一時帰国した際、大磯のアトリエで描かれたのがこの作品である。渡仏後、風景画に取り組むようになった作者にとって、大磯から見える景色は格好のモチーフとなった。<雲と海の対話>のシリーズには他に雷、春、冬がある(5点とも第7回潮展に出品)。どれも天候や時間、季節により様々に表情を変える海の様子を、空を広く取った簡潔な構図の中に描き出している。本作品では、赤く染まった空が、あたり一面の海を夕焼けの色に変えていく様子を、輝くようなオレンジ色のグラデーションでドラマチックに描き出している。どちらも刻々と変化する自然の一瞬を勢いのあるタッチでとらえており、画家と自然との絵を通した対話ともいえる作品である。