尊勝曼荼羅は、息災・増益等を祈って行われる尊勝法の本尊で、不空訳の「仏頂尊勝陀羅尼儀軌」及び善無畏訳の「尊勝仏頂修瑜伽法儀軌」などに説かれる。前者は大日如来を中心に八大菩薩をめぐらしているが、後者は八大仏頂をもってこれに代えている。本図は、この後者によるもので、大日如来の印相が智拳印にかわるほか、おおむね像容は同書巻上画像品に説く通りである。既指定の諸本もみな本図と同様で、この形式が最も一般に流布したものであることがうかがわれる。本図はその画風よりみて、製作の時期も鎌倉中期を下らず、諸本の中の最古本と目される。