金銅密教法具 こんどうみっきょうほうぐ

工芸品 / 鎌倉

  • 鎌倉 / 1301-1400
  • 金剛盤は盤上に鈴座、盤の底裏に三脚を鋲留めする。鈴座は八葉複弁と子弁からなる反花二重蓮華座上に蘂を刻んだ立ち上りを造り、上面の八花形蓮肉上に一二箇の凹みを設けて子房を表す。八葉複弁の裏には葉脈を表す。盤は不整四葉形で、胎を厚く、縁を高く三角に造り、上部左右には猪目を透かす。上面は縁の内側を一段高く造り、縁の外側面には段差を設ける。三脚はいずれも獅子の頭部と脚をかたどった獣脚とし、たてがみ、顔、爪などを表す。
     五鈷鈴は杵と鈴身が別鋳で、鈴身上部の連珠文帯部分で合わせてからくり留めし連結する。杵の把手は横長の鬼目四箇の上下に八葉三重の蓮弁飾りとし、蓮弁飾りは二条の紐帯で挟まれた連珠文帯で約する。蓮弁の先には蘂を刻む。鈷は五鈷で、元に節を造り、脇鈷の外側には嘴形を表す。鈴身は総体に厚く、口縁を裾で大きく外に広げ、かつ縁を高く造る。上端は杵と同様の連珠文帯とし、上面には照り起りのある八葉三重の蓮弁飾りおよび蘂を表す。肩と裾には段差を設け、胴には二条紐帯および杵と同様の連珠文帯を二組ずつ表す。鈴身内部には舌を結わえる突起を付し、舌を垂らす。
     独鈷杵は把手の中央に横長の鬼目を四箇配し、その上下に八葉三重の蓮弁飾りを表す。蓮弁飾りは二条の紐帯に挟まれた連珠文帯で約する。蓮弁の先には蘂を表す。鈷は元に節を造る。
     三鈷杵は断面が扁平で、鈷を三鈷とするほかは独鈷杵および五鈷鈴の杵に準じる。
     五鈷杵は鈷を五鈷とするほかは独鈷杵および五鈷鈴の杵に準じる。
  • (金剛盤)縦幅21.7 横幅28.8 総高5.3(㎝) 重量1607(g)
    (五鈷鈴)総高19.3 把手長4.9 鈴身高8.4 鈴身口径8.3(㎝)
         重量985(g)
    (独鈷杵)総長17.5 把手長5.3 把手厚2.0(㎝) 重量182(g)
    (三鈷杵)総長17.3 把手長6.0 把手厚2.4(㎝) 重量267(g)
    (五個杵)総長17.9 把手長6.1 把手厚2.3(㎝) 重量430(g)
  • 5口
  • 重文指定年月日:20040608
    国宝指定年月日:
    登録年月日:
  • 西大寺
  • 国宝・重要文化財(美術品)

密教の修法で用いられる密教法具である。
 総体は銅鋳造鍍金で、細部には線刻や彫りを施している。
 金剛盤、五鈷鈴、独鈷杵、三鈷杵、五鈷杵の五種からなる、いわゆる皆具【かいぐ】の遺例で、各々の法量や、連珠文帯、蓮弁飾り、蘂などの形制および作風の共通性からみて、五点一具として製作されたものが伝存したと考えられる。
 いずれも重厚な造りで、金剛盤の横幅に対する縦幅の比率が高く、縁が鎬【しのぎ】立って高い点、五鈷鈴の杵と鈴身が別鋳になり、鈴身の口縁が端部で大きく広がってかつ縁高い点、各杵の蓮弁飾りが重弁で、中鈷や独鈷に匙面【さじめん】をほとんど取らない点など、鎌倉時代も後期の特色が濃厚であるが、その造りは堅実で破綻がなく、雄健かつ細緻に仕上げた金工技術は優れている。
 製作当初の五種が一具である皆具の遺例は、国宝・金銅密教法具(広島・厳島神社、鎌倉時代)をはじめ、重文・金銅密教法具(大阪・藤田美術館、鎌倉時代)、重文・両部大壇具(奈良・室生寺、鎌倉時代)など数少ない。技術優秀にして製作当初の五種を具備した皆具の稀少例として貴重である。
 なお金剛盤に蓮華座を据えたり、各杵部や鈴身に連珠文帯をあしらう点は、先述の厳島神社蔵品(鈴身に胎蔵界四仏の種子を表す)や、室生寺蔵品(両部のうち胎蔵界分)にも看取される特色であり、本件も胎蔵界【たいぞうかい】に関わる法具として製作された可能性が高い。

金銅密教法具

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