坂の下から家と空を見上げた光景が切り取られている。このような構図はヴェネチアの細い運河から石造りの家を見通す作品と共通するものがあり、左右に道沿いの家や壁を入れることで建物に挟まれた細い道の奥へと続く遠近感が強調されている。坂道は鑑賞者の視線を絵の奥へといざなうとともに、大胆な構図は画面に安定感をもたらしている。重厚な油絵具の塗り重ねや、絵具の上にさらに加えられたかすれたタッチは、時を経た石の質感や乾いた街並みを巧みに表現している。
坂の上へ(アンダルシア)
三岸節子
小運河の家(1)
アンダルシアの町