丹後宮津の籠【この】神社の宮司家海部氏に歴代相承の秘巻として伝来した籠名神社祝部氏系図である。本文の体裁は竪系図の古態をよく存し、縦に継いだ料紙の中央に淡墨一線を縦に引き、線上に適宜間隔を置いて始祖以下直系の子孫のみを掲げており、その書写年代は九世紀後半と認められる。歴代の記載は「始祖彦火明命」から「孫健振熊宿称」に至る上代、「児海部直都比」から「児海部直勲尼」に至る海部管掌時代および「児海部直伍百道祝」以降の祝部の時代に大別される。その内容は海部氏の歴史的推移のみならず、正史に埋もれた古代地方豪族の変遷のあり方を伝えて注目され、わが国歴史上にその価値は高い。